浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第243回】2022年:ICT 推進の要(かなめ) ~ 異文化理解・多文化共生

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(左)iU中村伊知哉学長と               (右)キャンパス横、スカイツリーが見える


縁あって、iUで「多文化理解」の授業を受け持った。
iUとは「情報経営イノベーション専門職大学」(中村伊知哉学長)。ICT・情報をベースに起業を奨めるというユニークな新設校だ(キャンパスは東京都墨田区。嬉しい下町風情)。

グローバルに羽ばたかんとする若者に、その前提として「多文化理解、異文化理解=お互いに違うということの理解=共生」を軸に講義をした。 

まず、身近で分かり易い例がDervishダルビッシュ誰でも知っている米Major Leagueで活躍の野球投手。だが、それがどういう意味かを知る日本人は極めて少ない。Dervishとは中東(イラン、トルコ)におけるイスラム教の一派。Whirling(クルクル回る) Dervishとして知られる。【第92回】ダルビッシュって誰? - 浜地道雄の「異目異耳」

イラン人を父とする同投手のFirst Nameは「有/Yu」だが、有=アリAliとはイスラムシーア派の始祖である。逆に米国人はDervishが日本人だとは認識していない。つまり、異宗教が共生しているわけであり、「何と、そうなんだ!!」と好評を得たようだ。

加えて、英語力。折しも、2021年のノーベル物理学賞を受賞したのは日本出身で米国籍の真鍋淑郎・米プリンストン大学上席研究員(90)。「真銅さんの記者会見を聞いた?」と学生に問いかける。出身の愛媛弁(?)丸出し。そう、Cultureとは「(植物の)栽培」ということだし、つまり、種から成長し花となり、変えようもない体に染みついたのが文化なのだ。そして同氏のユーモアを交えての英語でのインタビューではJapanese English!!

 

ここで重要なのはノーベル賞に値いする論文は、勿論日本語ではなく英語だ。即ち「書き言葉=文書」であり、ペラペラ度ではない。つまり、(日常会話という範囲を超えて)自分の誇れる専門性、専門分野という命題に直結する。これまた、学生たちに「なるほど」と好評を得たようで嬉しいことだ。

更に、ICT情報をベースとするこれからのキャリアにおいて最も重要なのは、数値・統計の価値の認識。典型的には現下世界を揺るがすコロナ・パニック。極く素直に厚労省の正式発表の数値を見ると、日本における死亡者数は奇跡的に少ない。なぜ、感染、感染、感染と騒ぐのか?エビデンスをもとに「正しく恐れよう」。【第205回】 新型コロナは本当に怖いのか ~ COVID19で想うFナイトの「不確実性」論 - 浜地道雄の「異目異耳」

数値、統計について、その意味するところを正当に検証する。【第224回】 五輪・コロナに思う ~「安全」と「安心」は別もの - 浜地道雄の「異目異耳」

 また、SNSインターネットの発達でありとあらゆる情報、ニュースが世界を飛びかう今、ことの信ぴょう性が問われる。それらがfakeではないか、という問いかけのために重要なのはFACT CHECKING。団体概要 | FIJ|ファクトチェック・イニシアティブ

 そして、ICT上の文化の象徴としての暦Calendarの認識が重要だ。例えば2011年9月11日の同時多発テロ、9・11だ。だが考えて見よう、Septemberは3月Marchから始まるグレゴリアン歴では7番目の月であり、9番目の月ではない。911とは米国における緊急番号(日本では110番)だ。 

授業をしたのは10月。Octoberは実は8番目の月であり10番目ではない。その証拠にタコの足は8本。Octopusだ。音楽でいえばOctaveオクターブ) (ラテン語の八の意から) 七音からなる全音階の第八音。また、Septet=7重奏、Octet=8重奏、だ。 

そしてまた、年号。本2022年はグレゴリアン、A.D. Anno Domini主の年。紀元前B.C.はBefore Christ。令和Reiwa4年と言っても日本以外では通じない。(また、紀元前660年、神武天皇が即位から数えると皇紀2682年)。ユダヤ歴でいえば5782年(紀元前3761年10月7日を創世紀元とする太陰太陽暦)。イスラム歴では1443年(マホメットメディナへ聖遷した西暦622年を元年)。【第30回】 夜のBreakFast - 浜地道雄の「異目異耳」

 「新年」で言えば、筆者にとり忘れられない 2000年問題。2桁(19)99年から(20)00年、つま り「ゼロに戻る」とコン ピューターが読み込み、世界は大混乱か? と警戒した。結果的に大きなトラブルは生じなかったが、それもこれもSEたちの懸命の努力「縁の下の技術、英知」の結果、と若者たちを励ました。 

さて、いよいよ2022年、令和4年。ディジタル庁も発足したが、そのリーダシップも縁の下の力持ちの「英知」という宝があってこそ、に違いない。 

 

「月刊グローバル経営」2022年[新年号]より転載・加筆

参考:大学案内|情報経営イノベーション専門職大学【iU】|ICTで、まだない幸せをつくる。

 

拙稿Global Business English File [新年号] 過去記事:

2021   【第181回】米大統領 〜 Fat Lady への期待 - 浜地道雄の「異目異耳」

2020  【第120回】REIWA 2 に思う温故知新 - 浜地道雄の「異目異耳」

2018   【第110回】Singularity:人類の未来を示唆する深遠なことば - 浜地道雄の「異目異耳」

2017  【第90回】 魅力の「ナショ・ジェオ」 - 浜地道雄の「異目異耳」

2016   【第78回】 新年に思う接頭辞「A」 - 浜地道雄の「異目異耳」

2015   【第69回】 英語ができるようになった瞬間!? - 浜地道雄の「異目異耳」

2014   【第58回】 新年 〜 馬脚を表わさないように - 浜地道雄の「異目異耳」

2013  【第48回】 E Pluribus Unumの勝利 - 浜地道雄の「異目異耳」

2012   【第38回】 二面性のJanuary - 浜地道雄の「異目異耳」

2011   【第33回】 「てふてふ」の韃靼雄飛 - 浜地道雄の「異目異耳」

2009   【第5回】Parsiの商人 - 浜地道雄の「異目異耳」

2008   【第4回】Orient(日が昇る)に思う - 浜地道雄の「異目異耳」

2007   【第6回】海賊にみる「RとL」考 - 浜地道雄の「異目異耳」