浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第48回】 E Pluribus Unumの勝利


2013年01月10日

am(午前)、pm(午後)、AD(紀元前)、PS(追伸)、CV(履歴書)。
これらの普段使いなれた「記号?」はラテン語だ。etc(et cetera)の「et」は「and」そして「cetera」は「他の」を意味する。status quoの「quo」は「of which」、つまり「the state of which = 現状」だ。

慣用表現としても、vice versa(逆に)、de facto(事実上)、ad hoc臨機応変)等々ある。Quo vadis ? どこに行かれるのですか?(最後の晩餐でペトロがイエスに投げかけた問い)、Vox populi 民意(=天声人語)、Veni vidi vici 来た、見た、勝った(シーザー)など、実に深遠だ。

英語の語彙の70%はラテン語に由来していると言われており、ビジネスの言葉をちょっと拾ってみても、ambactus(ambassador)、computare(computer)、carre(car)、exportare (export)、importare(import)、negotiatio (negotiate)、と枚挙にいとまがない。お金(money)の語源Manetaとはローマ神話の主神Jupiterの妻Juno Monetaだ。当時のコインに彼女の頭部のデザインンが刻まれていたことから、英語に取り入れられた。vocare は「呼ぶ」。神から呼ばれての天職がvocation。英語の calling(天職)だ。

さて米国人なら誰でも知っていて、しかし、日本ではよほどの米国通にも知られてないのが、E Pluribus Unum 。 Eはfrom, PluribusはPlural複数、UnumはUni-/Unite/One。つまり "out of many, one"「多くからひとつ=多州からなる統一国家」の意味で、1955年までは米国の標語(motto)となっていた。それはアメリカ合州国国璽(こくじ=Great Seal of the United States)にある白頭鷲(国の象徴)が咥えたリボンに書かれた文字だ。鷲は足で13枚の葉と実を持つオリーブと13本の矢を掴んでいる。頭上の星の数13個、胸の13本の縦線も建国13州を表わしている。その図柄は公式演説台、パスポート、一ドル紙幣や、25¢コイン(クォータ)にもある。

幕末に、日米和親条約の締結に尽力した中濱(ジョン)万次郎がこのE Pluribus Unumを日本に向けた最大のメッセージとし、これに坂本竜馬が大いに感化されたという記録もある。

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大統領の公式演説台 アメリカ合州国国璽 25¢コインの裏

昨年の米大統領選を通じて民主党オバマ大統領が強調したのが「United」。

その勝利演説では「出自が何であろうと、黒であろうと白であろうと、人種を問わず、貧富に関係なく、ゲイであろうとStraight(非同性愛者)であろうと、皆一丸となろう」として、United (States of America)と締めくくった。拍手喝采の根にはこのラテン語 E Pluribus Unumに秘められた建国の思いがある。

一方、格差を認める主義を持つ共和党ロムニー候補には、この「United我々は一つだ」というアピールが欠けていたことが敗因とも言われている。

いよいよ新しい年。2013年1月21日、オバマ米大統領の新任期が始まる。

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