浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第224回】 五輪・コロナに思う ~「安全」と「安心」は別もの

 

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出所:Awakend_Citizen

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出所: Awakened_Citizen

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出所: Awakened_Citizen

特記:本稿は「コロナは怖くない」と主張するものではなく、F.ナイトの不確実性論の通り、エビデンス(証左、統計)に基づき、正しく知り、正しく恐れよう」という提案です。


4年に一度の世界的イヴェント、オリンピックのモットーFaster, Higher, StrongerにTokyo大会では Together が加わり、そのレガシー(未来に向けての財産)が期待される。

その五輪が「無事」終わった(7月23日-8月8日)。

と述べたが、はてさて「無事」safeだったのだろうか? コロナ・パニックという「有事」があり、緊急事態宣言declaration of a state of emergencyが発出され、実に難しいかじ取りだ。

 そして、パラリンピック(8月24日―9月5日)へと続くが、こちらも「無観客」ということで、その収入がゼロとなれば、運営上の大問題である。かつ、社会経済へのインパクトは甚大であり、その膨大な負担を負うのは、市民、国民である。

 

 今回繰り返し主張されてる「安全安心(の大会)」という並列表記は不可解で、その不可解さは英語で検討すると明らかだ。 

オリンピックの最大メディアスポンサーの米NBCはこう報じている(July 22):Despite repeated assurances from Suga and other top Japanese officials that the Olympics would be "safe and secure" , already some 80 people involved in the Games  have tested positive for COVID.

安全はsafeであろうが、安心はsecureともreliableともニュアンスが異なる。worry-free Olympicsとするともっとも近い。つまり、人の「心の状態」だ。 

 この「安全と安心は別物」というのに分かり易い例は人類の憧れ、「空」「宇宙」飛行だ。

 1903年12月17日にライト兄弟が初飛行に成功し、25歳のリンドバーグが大西洋無着陸横断したのが1927年。アポロ11号の月面着陸は1969年。 

そして今年7月11日、イギリスの富豪実業家、リチャード・ブランソン氏が自社ヴァージン社開発の宇宙船で有人宇宙飛行を決行、飛行時間90分、宇宙体験は6分間。これをもって一般向け約2800万円のチケットを売り出した。すでに700枚を売り切った由。

それに遅れること9日。TT大手アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏が20日、みずから設立した宇宙開発企業の宇宙船に搭乗し宇宙への飛行に成功。商業ベースの宇宙旅行を提供することを目指している由。

と、確かに歴史的に、技術面(事故率など)では安全性は大いに向上した。が、安心感については、人々には時代時代で恐ろしく、ゆえにこそその勇気に感嘆したものだ。年月が経ち、これだけ世界中に航空網が発達しても、飛行機を怖いと思う人もいよう。

 また、近代生活では欠かせない自動車。現実、自動車事故は不可避だ。かといって「リスク・ゼロ」と目標設定をして、廃止ということにはならない。

ゆえに、「F.ナイトの不確実性論」に沿って、「保険ビジネス」が成り立っている。さらに言えば、ビジネス(人生)そのものがVenture(冒険、Risk Taking)なのだー!

 

さてそこで、思いは現下の「オリンピック実施」と「(コロナ禍による)緊急事態宣言」という二つの相反する決定に戻る。

NBC報道の通り、菅義偉総理大臣は「緊急事態宣言のもとでオリンピックを開催する中、国民の命と健康を守るため感染対策を徹底し、『安全安心の大会』を実現していく」と繰り返し述べている。

が、上述「宇宙飛行」の例のように、人間にとり「安全」と「安心」は異なるものだ。

厚生労働省の発表統計によると*、コロナによる死亡者数は奇跡的に少ない。F. ナイトの示唆に沿えば、即ち、エビデンス(証左)は安全を示している。

(2020年6月号拙稿「コロナで思うナイトのUncertainty」)

【第205回】 新型コロナは本当に怖いのか ~ COVID19で想うFナイトの「不確実性」論 - 浜地道雄の「異目異耳」

従い、国の施策としては、まず、この「安全(=死亡者が少ない)」を検証、確認した上で、「安心して下さい」と国民に訴えるべきではなかったか。そうすれば内閣支持率もここまでは下がらなかったろう。ひとくくりに「安全安心」と繰り返しても市民の「安心感」は得られない。

「側近」や「専門家」の具申は無かったのだろうか。

 

最後に:コロナ・パニックによる社会、経済、教育システムの大混乱に鑑み、「コロナ前の暮しを取り戻そう」と市民声明を発出した。(政治扇動ではなく、個人の資格で)

「コロナ前」の暮らしを取り戻そう!市民の会声明 | 募金もできるオンライン署名プラットフォームVoice(ボイス)。あなたの声で社会は変わる。

是非の、賛同、署名をーー。

 

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出所:東洋経済

*「年齢別陽性者数」出所:https://toyokeizai.net/sp/visual/tko/covid19/

 

関連拙稿:

【第216回】 五輪実施 ~ コロナを正しく知り、正しく恐れる - 浜地道雄の「異目異耳」

(一社)日本在外企業協会「月刊グローバル経営」2021年9月号より転載加筆