浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第30回】 夜のBreakFast


2011年05月17日

 

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♪Im wunderschönen Monat, Mai♪(詩;ハイネ。シューマン「詩人の恋」)、
Wonderfully-Beautiful Month, May 本当に、美しい五月だ。
しかし、Mayは普遍的に5th Month (of the year)なのだろうか?

ものの本によれば、ローマ暦では年初は3月ゆえ、繁殖・成長を司るMaia(マイア女神)に由来するMayは、従い、3番目の月のはずだ。

3月から、一巡して最後の月、1月(January)に到達。2月は年末の「付け足し」、最後の「残り物」として28日(閏年はleap)が与えられた由。
その名はローマ神話のフェブルウスFebruariusの祭りからとられた。

2月はWage(日給、週給)でなく「月給Salary」を払う雇用主から言わせれば少ない労働日数なのに通常通りに払い、雇われた側から言わせれば2月以外の29 30 31日の月は余分に貰うべきだとして、労働争議になりかねない。
それは冗談にしても、暦というのは歴史・天文・自然と結びつき神秘的であるだけでなく、各国各様のビジネス風習にも大いに関連してくる。

2001年、アメリカでおきた「同時多発テロ」は9月11日に発生したから「9・11、Nine-Eleven」と通称される。しかし、September とは年初3月から数えて7番目(Sept=7、cf. 8=Oct Octopus蛸の足は8本)だから、語源的には「9」という数字とは結びつかないはずだ。
アメリカにおける緊急ダイヤル「911、Nine-One-One」(日本で言えば110番)の連想もあるのだろう。

なお、ドイツ人に言わせれば9・11や3・11はそれぞれ11月9日、11月3日という発想になる。

ビジネス上実際に必要なのは夏時間と冬時間。米国でのDaylight Saving Timeは4月の最初の日曜日午前2時から始まり、10月最後の日曜日午後2時まである。これを現地時間でも、「時差」を考える日本からでも「体感」として身につけないと時々失敗する。
多人種、多宗教の集まるアメリカ合州国では特に、感謝祭、クリスマス、Yom Kippur(贖罪の日)でなどなど、様々な異なる祭休日があるから注意を要する。

「旗日(はたび)」とは日本では本来文字通り日の丸を揚げる祭休日を指すのだが、アメリカではFlag Dayというと6月14日、星条旗が国旗と定められた記念日を指す。これとても州ごとに休み具合は異なる。

我々が当然のごとく使ってる西暦とはグレゴリア暦であり、2011年5月1日、May・Dayは、日本暦では平成23年5月(さつき)1日、ユダヤ暦ではなんと5771年Nisan月27日だ。又、イスラム暦では1432年 Jumada I 月27日である。

預言者ムハンマドがマッカからマディナへ移住(ヒジュラ、聖遷)した最初の年であるユリウス暦622年7月16日をヒジュラ暦元年の1月1日としている。太陰暦であるイスラム暦太陽暦より11日ばかり1年が短いから、季節と月が一致しない。第9月であるラマダーンは断食の月だが、冬にあたることもあれば、夏にあたることもある。

サウディアラビアの首都リヤドに駐在時のラマダーン月のことであった。
スーク(市場)のお客から「1時に来い」とアポがとれた。
午後1時に行ってみると、一帯はシャッターを閉めてガランとしている。一体どうしたことかと連絡してみると、「夜中過ぎの1時」とのこと。
気を取り直して再度行ってみると、煌々と電気がついた市場に人が溢れている。くだんの店先にも人がいっぱいでドンチャン騒ぎ。太陽が出ている昼間は唾も飲み込まない(吐き捨てる)断食ぶりだが、日没とともに徹夜で「大食い」が始まる。結果、翌日は寝不足でフラフラになる。そして、「夜のBreak(止める)Fast(断食)」のお蔭で、通常月よりも太ってしまう。

本当に文化は異なる。

(社)日本在外企業協会 「グローバル経営」より転載・加筆

 

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