浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第87回】 the Americaがuniteする道 〜 愛と敬意

 

2016年10月21日

いよいよ注目の米大統領選挙が11月8日(4年ごとのうるう年、11月の最初の月曜日の次の火曜日)に迫った。

年初より続いてきた選挙運動だが、中でも注目を集めるTV討論会。
民主党ヒラリー・クリントン候補も問題を抱えてるが、共和党ドナルド・トランプ候補の
口汚い主張は、米国の伝統であるPC (Political Correctness)の枠を外れ、大いに懸念される。

さて、その口角泡を飛ばしての見苦しいTV討論会だが、ここにそのパロディー映像を見、抱腹絶倒、その発想に感心させられる。
"Time of my Life" parody featuring Trump and Clinton (original)

Time of my life! 今、自分は人生の絶頂期にある。
それは、全て、君のお蔭だー。


Now I’ve had the time of my life
No, I never felt this way before
Yes I swear, it’s the truth
And I owe it all to you


‘Cause I’ve had the time of my life
And I owe it all to you


オランダのTVで放映されたとのことだが、このオリジン曲は
1987年のアメリカ映画「ダーティ・ダンシング(Dirty Dancing)に使用されている。

時に苦しい人生行路。そこに良き伴侶があればやっていける。
そのPartnerとも時にはいがみ合いもあるが、やはり最後はそこで、お互いをrespectし、愛し合うーー。

さあ、the United States of Americaもこのように「unite=統一」すればよいのだがー。

折しも、2016年度ノーベル文学賞は、村上春樹ではなく、ボブ・ディランに与えられたがその歌(歌詞)も楽しく、英語を勉強する為のよき材料である。
Blowin' in the Wind 風に吹かれて〜。

How many roads must a man walk down
Before you call him a man?


また、1988年、二人の大学生が始めたパロディー新聞「Onion」は鋭い。選挙そのものが7ヶ月延期??
参照: FEC Extends Election By 7 Months To Give Nation Chance To Better Get To Know Candidates

選挙戦が不毛なだけに、一瞬、「えっ」とおもわせます。

 

関連拙稿:
「1Q84」年:Appleの挑戦
ビジネスに不可欠な体液=ユーモア

【第86回】 「国際NGO」のTie

 

2016年09月20日

 

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国際NGOのTie

米国で商用インターネットが始まったのは1988年。
「情報時代」の夜明けに転職した筆者にとってのビジネス原点はデータベース=DB(DataBase)、即ち、コンピュータによる諸資料の管理・運用だった。

赴任先NYCでの思い出深い仕事は企業DBを使ってのDirect Mail手法で実施したUNICEF国連児童基金の募金集め。
但し、まだ電子mailではなく、snail (カタツムリ)mail、即ち郵便だった。

個人情報保護という問題ではなかったがそれでも、権利関係など種々神経を使いながら弁護士とも相談し実施した。
結果、予想以上の成果があがり(=寄付金が集まった)、UNICEFから感謝を受けた。こうしてDirect Marketingの手法を学び、社会貢献もできたわけだ。

そんなある時、UNHCR国連難民高等弁務官緒方貞子さんにこのお話をしたところ、
「素晴らしい。でも政府・公的機関だけではなく、NGO も助けて上げて下さい」とのこと。
NGO (Non-Government Organization)? 当時は耳慣れない言葉で、例えばと彼女が示唆してくれたのがThe Save the Childrenだ。

早速調べてみると、英国のNGOで1919年、第一次世界大戦で荒廃した欧州で敵国の子供の援助を目的としてエグランタイン・ジェブによって創設された団体。 総裁のAnn王女(Elizabeth女王の娘)は評価されてノーベル平和賞の候補に推薦されたこともある由。

その米国本部がコネティカットの我が家の近くのとのことで訪ねた。そこで売っていた派手なネクタイに魅入られた。それを購入することで、一定率が寄付となる。 それぞれ、楽しい図柄は子供たちが描いたもので、ワクワク感が伝わってくる。 例えば:
“Kids in the rain” 〜 by Carline age 8 彩り豊かな傘
“Kids and sports” 〜 by Michael age 9 色々なスポーツ
“A rainbow of the kids” 〜 by Katie age 10 虹のようにさまざまな国旗
“Golf lovers’ dream” 〜 by Lindsay age 11 ゴルフ・マニアのパパ
“If we all work together” 〜 by Lean age 12 色々な国旗のシャツを着て万歳
“Dads” 〜 by Sarah age 12 お父さんたちの様々な職業
“Sport” 〜 by Chelsea age 12 サーカー・野球などいろいろなボール
“Children of the world” 〜 by Laura age 14 世界みんなで手をつなぐ

 

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Portland Press Heraldの1993年6月22日の表紙

そんな頃、ある地方紙(Portland Press Herald, June 22,1993)に出た就任早々のクリントン大統領とブッシュ(父)前大統領が同じネクタイをしてる写真に驚いた。
いわく:President Clinton and George Bush don’t share political ties, but they sport identical neckties last week in Portland. The Save the Children ties are adorned with pictures of smiling kids.

「両大統領は政治的なtie連携はしないが同じタイ(tie)をしてる」。
思わず膝を打った。この派手なネクタイは子供のデザインと市民は知っており、格好のsport(見せびらかす)なのだろう。

筆者は今も内外での会議ではダークスーツにこの派手なネクタイを着用する。
いつぞや、タイ(バンコック)での会議で同じタイをした紳士がおり、二人で(他の人はわからない)握手して話が弾んだこともあった。

翻って日本。クールビズのおかげでめっきりネクタイ着用者がいなくなった。
ノー・タイは確かに時代の流れ。でも「(周りの)人と同じ」だけではなく上手に「個性を打ち出す」こともだいじではないか。

そこで、リクルート・ルックという「制服」で就活にいそしむ学生たちにはこう言って励ました。
「この派手なタイをしていきなさい。もし、面接官に聞かれたならこう答えなさい。
『国際NGOです』とーー」。

採用間違いなし(?)

 

一般社団法人日本在外企業協会「月刊グロ―バル経営」(2016年9月号)より転載・加筆。

関連サイト::
Save the Children (UK)
Save the Children (日本)

【第85回】 番外編「赦しのこころ」こそ世界平和への第一歩

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モンテンルパ収容所近くの日本人墓地(2016年2月、筆者撮影)

 

2016年08月26日

 

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キリノ大統領の記念碑

本年一月、天皇・皇后はフィリッピンを訪問、キリノ(元)大統領の孫娘に会われた。
参照:両陛下と懇談するルビーさん(時事通信)

そのキリノ(元)大統領の顕彰碑が東京、日比谷公園日比谷公会堂の東側に完成した。
参照:戦犯を釈放 比大統領顕彰 加納莞蕾が恩赦嘆願 東京に碑完成 親族が交流(中国新聞、ヒロシマ平和メディアセンター)

キリノ(元)大統領はマニラ市街戦で妻子4人を日本兵に殺された。が、大いに悩んだ結果、1953年7月、モンテンルパ刑務所に収容されていた100余人のBC級戦犯に恩赦を与えた。

そのこころは「赦し、Forgiveness」。これが、フィリピンと日本の経済関係を含む友好関係の原点である。

翻って、5月17日のオバマ米大統領の広島訪問については、「謝罪の有無」を巡って論議がある。日本被団協の事務局長田中熙巳氏の困惑、悩みも理解できる。
参照:事務局長、米大統領「所感」評価を後悔(毎日新聞)

が、「謝罪を求めない」からこそ、米国現役大統領の被爆地訪問という歴史的なイヴェントが実現したのである。
参照:【第82回】 オバマ米大統領広島訪問に学ぶ - 浜地道雄の「異目異耳」

日本自身がこの「赦しのこころ」を率先、実践することによってこそ、慰安婦南京虐殺事件など、難しい問題を抱える近隣国との融和への一歩が踏み出せる。憎しみの応酬に和平はこない。

日本被団協(と九条の会)へのノーベル平和賞授与への期待も高まる。(10月7日発表、オスロ) 参照:The True Nobel Candidates 2016: Article 9, Japan

関連サイト
世界の平和モニュメント ・世界の平和モニュメント Philippinesの項、Muntenlupaの現地報告

【第84回】 JETに想う 人のつながり

 

2016年07月19日

 

「ああ、日本っていいなあ」と思う場の一つが温泉だ。

それも都心に温泉銭湯(public bathhouse)があり、時に訪れリラックスする。湯がコーヒーのような褐色で本当に温泉なのだろうと悦にいってる。

某日、どうしたことか、そこに金髪碧眼、まるでコメディー映画「テルマエ・ロマエ(ローマ公衆浴場)」に出てるような長身・筋肉質な若者がいた。

お互い裸(当たり前)なので、少々シャイだ。

が、ともかくSpeak-Up。同じ小さな湯船で黙ってるのも気まずく、Where are you from?と話しかけた。日本の高校で英語を教えてるとのこと。

NYCで生まれ育ち、米国南部の大学を出て、二年計画での日本滞在、ちょうど一年が終わったところ。日本の風物が好きで、人づてに聞いたこの銭湯に初めて来た由。

JETか?と聞いたら、相手は、え!何で知ってるのだ、と会話が始まる。
 

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JETのメンバー

筆者はNYC駐在時代、創立(1987年)間もないこのJETの若者群の日本向け送り出しを手伝った。JETプログラム(The Japan Exchange and Teaching Program)とは「語学指導等を行う外国青年招致事業」で、参加者の90%が外国語指導助手(ALT Assistant Language Teacher)として全国の小・中学校や高等学校に派遣されている。

その後今や、招致国は4ヵ国から43ヵ国に、人数は848人から4,786人へと大きく発展。プログラム開始以来、65ヶ国から6万2,000人以上が参加、と聞く。 

税金を使ってのこれだけの日本独特の大規模事業。さて、その「成果=日本人の英語力向上」は?と問う声も少なくない。

が、ともあれ、思い出すのはJETの20周年記念式典(2007年)。皇太子を主賓とするその総会でのグレアム・ホルブルック・フライ駐日英国大使(当時)の記念講演でのことばが忘れられない。No man is an island「誰も島ではない」。どういう意味?

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No Man Is An Island. izquotes.com

家に帰って調べるとイングランドの詩人(セント・ポール大聖堂の首席司祭)ジョン・ダンJohn Donne (1572-1631)の詩とのことで、その魅力にひきこまれる。

No man is an island, entire of itself; Every man is a piece of the continent, a part of the main.

なるほど、人間は単独で存在する島(のようなもの)ではない。「人は一人では生きていけない」「人生持ちつ持たれつ」。日本もユーラシア大陸の一部ゆえ、島国根性だけではグローバル化とはいかない。

ちなみに、ヘミングウェイ「誰がために鐘はなるFor Whom the Bell Tolls」もこのダンの説教の一節とのこと(1940)。

日本流にいえば「袖触れ合うも他生の縁」だし、ビジネス上もだいじな人間関係、チームワークと、報連相につながる。古き詩人は深いところをついている。

日本を愛し、馴染んでる青年たちの一部は日本の企業でも社員として採用されているとも聞く。

この若きアメリカ人は「今後もよろしく」と着衣所でモバイルを取りだして、FB(Face Book)の友達申請をしてきた。今ふうだ。

一般社団法人日本在外企業協会「月刊グロ―バル経営」(2016年6月号)より転載・加筆。 

 

関連記事:

【第73回】 Speak-up ⇒ Engineering (創造) - 浜地道雄の「異目異耳」

関連サイト:
Jet Program

【第83回】 番外編 国際教育研究会:月例研究会で講演

 

2016年07月11日

【第83回】
番外編 国際教育研究会:月例研究会で講演

以下、許可を得て、同会の報告を記します。
「当研究所でこのような内容が語られる事は初めてでもあった」とのこと。

折しものダッカ・ISテロ事件で、「コーランを知ってるかどうか」が
殺害対象の選択の基準であったよし。
まことにそのタイミングには我ながら驚かされます。

    = 記 =

第164回月例研究会
日 時:2016年6月25日(土)
場所:(財)日本英語検定協会 会議室
講 師:浜地道雄(一般財団法人グローバル人材開発顧問)
テーマ:「世界に通用する真のグローバルイングリッシュ」
―中近東・及び米国での仕事で学んだ国際人の条件―

講師の浜地道雄氏は、慶応大学経済学部をご卒業後に、グローバルに多角的な事業を行っている総合商社双日株式会社の前身であったニチメン社員時代に、石油部に配属され、イラン、サウディアラビア等の中東に長期間滞在して活躍された事がある。

今回の講演では、その時のご経験に基づいて、主として、中近東での仕事を通して体験した事を中心に、世界に通用するグローバルイングリッシュや国際人の条件などについて語られた。

講演の冒頭で浜地氏は、2013年に開催された異文化理解国際フォーラムでは「言語・異文化を学び、尊重することは、戦争を二度とするまいという願い」であった事を紹介された。浜地氏は、この国際フォーラムの紹介の中で、英語を始め、様々な言語とその背景にある文化を学ぶことは、世界平和に結びつく事であることを語られた。

 異文化を繋ぐ、世界共通語としての英語を話す人々との間でコミュニケーションを取る手段として使われる英語はGlobal Englishと呼ばれている。国際ビジネスコンサルタントでもある浜地氏は、Global English というコンセプトを体感し、尊重し、自分の英語をGlobal English として自信を持って使いこなせた時に、世界中の人々と対等にコミュニケーションがとれ、真の異文化交流が出来る英語話者になれるのではないかと語られた。

浜地氏は、イスラム教の聖典であるコーランの内容を取り上げて、豚を食べない事や酒を飲まないことなどを含めて、アッラーを崇拝するイスラム教について語られた。また、長い中東イスラーム圏との関係を通じて、交友を維持してきたビジネスマンとして、グローバル時代での異文化理解の必要性を現場体験を通して熱っぽく語られた。

浜地氏は、サブタイトルの「国際人の条件」と結びつけて、次のような事を語られた。

第一は、英語で誰とでも話せるようになり、世界を知ることで国際感覚を身に付ける事。第二は、人前で自分の意思をはっきりと言えること。第三は、日本人である事に誇りを持ち、自国の文化、歴史、伝統が語れる事を挙げられた。特に、浜地氏は、海外でのビジネスマンとしての体験を通して、国際人とは「分け隔てなく世界の人と接し、日本を敬う事が出来る人」であることを強調された。

浜地氏が、講演のまとめとして主張されたことは、文明は人類の共通の財産として共有し、その恩恵を受けるべきものであるが、文化は、理解が伴わないと衝突するので、異文化には、違いを認め合い、寛容な心で理解し合う精神が大切となることを熱っぽく語られた。当研究所でこのような内容が語られる事は初めてでもあったので、質疑応答も盛り上がり、有意義な月例研究会であった。

参照:講演レジメ(ワード)

関連記事:

【第75回】 「番外編」イスラムを知らずして世界は語れない - 浜地道雄の「異目異耳」

【第30回】 夜のBreakFast - 浜地道雄の「異目異耳」

【第57回】 何故英語を学ぶのか ~ 世界平和のために! - 浜地道雄の「異目異耳」

関連サイト
国際教育研究所