浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第86回】 「国際NGO」のTie

 

2016年09月20日

 

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国際NGOのTie

米国で商用インターネットが始まったのは1988年。
「情報時代」の夜明けに転職した筆者にとってのビジネス原点はデータベース=DB(DataBase)、即ち、コンピュータによる諸資料の管理・運用だった。

赴任先NYCでの思い出深い仕事は企業DBを使ってのDirect Mail手法で実施したUNICEF国連児童基金の募金集め。
但し、まだ電子mailではなく、snail (カタツムリ)mail、即ち郵便だった。

個人情報保護という問題ではなかったがそれでも、権利関係など種々神経を使いながら弁護士とも相談し実施した。
結果、予想以上の成果があがり(=寄付金が集まった)、UNICEFから感謝を受けた。こうしてDirect Marketingの手法を学び、社会貢献もできたわけだ。

そんなある時、UNHCR国連難民高等弁務官緒方貞子さんにこのお話をしたところ、
「素晴らしい。でも政府・公的機関だけではなく、NGO も助けて上げて下さい」とのこと。
NGO (Non-Government Organization)? 当時は耳慣れない言葉で、例えばと彼女が示唆してくれたのがThe Save the Childrenだ。

早速調べてみると、英国のNGOで1919年、第一次世界大戦で荒廃した欧州で敵国の子供の援助を目的としてエグランタイン・ジェブによって創設された団体。 総裁のAnn王女(Elizabeth女王の娘)は評価されてノーベル平和賞の候補に推薦されたこともある由。

その米国本部がコネティカットの我が家の近くのとのことで訪ねた。そこで売っていた派手なネクタイに魅入られた。それを購入することで、一定率が寄付となる。 それぞれ、楽しい図柄は子供たちが描いたもので、ワクワク感が伝わってくる。 例えば:
“Kids in the rain” 〜 by Carline age 8 彩り豊かな傘
“Kids and sports” 〜 by Michael age 9 色々なスポーツ
“A rainbow of the kids” 〜 by Katie age 10 虹のようにさまざまな国旗
“Golf lovers’ dream” 〜 by Lindsay age 11 ゴルフ・マニアのパパ
“If we all work together” 〜 by Lean age 12 色々な国旗のシャツを着て万歳
“Dads” 〜 by Sarah age 12 お父さんたちの様々な職業
“Sport” 〜 by Chelsea age 12 サーカー・野球などいろいろなボール
“Children of the world” 〜 by Laura age 14 世界みんなで手をつなぐ

 

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Portland Press Heraldの1993年6月22日の表紙

そんな頃、ある地方紙(Portland Press Herald, June 22,1993)に出た就任早々のクリントン大統領とブッシュ(父)前大統領が同じネクタイをしてる写真に驚いた。
いわく:President Clinton and George Bush don’t share political ties, but they sport identical neckties last week in Portland. The Save the Children ties are adorned with pictures of smiling kids.

「両大統領は政治的なtie連携はしないが同じタイ(tie)をしてる」。
思わず膝を打った。この派手なネクタイは子供のデザインと市民は知っており、格好のsport(見せびらかす)なのだろう。

筆者は今も内外での会議ではダークスーツにこの派手なネクタイを着用する。
いつぞや、タイ(バンコック)での会議で同じタイをした紳士がおり、二人で(他の人はわからない)握手して話が弾んだこともあった。

翻って日本。クールビズのおかげでめっきりネクタイ着用者がいなくなった。
ノー・タイは確かに時代の流れ。でも「(周りの)人と同じ」だけではなく上手に「個性を打ち出す」こともだいじではないか。

そこで、リクルート・ルックという「制服」で就活にいそしむ学生たちにはこう言って励ました。
「この派手なタイをしていきなさい。もし、面接官に聞かれたならこう答えなさい。
『国際NGOです』とーー」。

採用間違いなし(?)

 

一般社団法人日本在外企業協会「月刊グロ―バル経営」(2016年9月号)より転載・加筆。

関連サイト::
Save the Children (UK)
Save the Children (日本)