2016年07月19日
「ああ、日本っていいなあ」と思う場の一つが温泉だ。
それも都心に温泉銭湯(public bathhouse)があり、時に訪れリラックスする。湯がコーヒーのような褐色で本当に温泉なのだろうと悦にいってる。
某日、どうしたことか、そこに金髪碧眼、まるでコメディー映画「テルマエ・ロマエ(ローマ公衆浴場)」に出てるような長身・筋肉質な若者がいた。
お互い裸(当たり前)なので、少々シャイだ。
が、ともかくSpeak-Up。同じ小さな湯船で黙ってるのも気まずく、Where are you from?と話しかけた。日本の高校で英語を教えてるとのこと。
NYCで生まれ育ち、米国南部の大学を出て、二年計画での日本滞在、ちょうど一年が終わったところ。日本の風物が好きで、人づてに聞いたこの銭湯に初めて来た由。
JETか?と聞いたら、相手は、え!何で知ってるのだ、と会話が始まる。
筆者はNYC駐在時代、創立(1987年)間もないこのJETの若者群の日本向け送り出しを手伝った。JETプログラム(The Japan Exchange and Teaching Program)とは「語学指導等を行う外国青年招致事業」で、参加者の90%が外国語指導助手(ALT Assistant Language Teacher)として全国の小・中学校や高等学校に派遣されている。
その後今や、招致国は4ヵ国から43ヵ国に、人数は848人から4,786人へと大きく発展。プログラム開始以来、65ヶ国から6万2,000人以上が参加、と聞く。
税金を使ってのこれだけの日本独特の大規模事業。さて、その「成果=日本人の英語力向上」は?と問う声も少なくない。
が、ともあれ、思い出すのはJETの20周年記念式典(2007年)。皇太子を主賓とするその総会でのグレアム・ホルブルック・フライ駐日英国大使(当時)の記念講演でのことばが忘れられない。No man is an island「誰も島ではない」。どういう意味?
家に帰って調べるとイングランドの詩人(セント・ポール大聖堂の首席司祭)ジョン・ダンJohn Donne (1572-1631)の詩とのことで、その魅力にひきこまれる。
No man is an island, entire of itself; Every man is a piece of the continent, a part of the main.
なるほど、人間は単独で存在する島(のようなもの)ではない。「人は一人では生きていけない」「人生持ちつ持たれつ」。日本もユーラシア大陸の一部ゆえ、島国根性だけではグローバル化とはいかない。
ちなみに、ヘミングウェイ「誰がために鐘はなるFor Whom the Bell Tolls」もこのダンの説教の一節とのこと(1940)。
日本流にいえば「袖触れ合うも他生の縁」だし、ビジネス上もだいじな人間関係、チームワークと、報連相につながる。古き詩人は深いところをついている。
日本を愛し、馴染んでる青年たちの一部は日本の企業でも社員として採用されているとも聞く。
この若きアメリカ人は「今後もよろしく」と着衣所でモバイルを取りだして、FB(Face Book)の友達申請をしてきた。今ふうだ。
一般社団法人日本在外企業協会「月刊グロ―バル経営」(2016年6月号)より転載・加筆。
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