浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第10回】 ビジネスに不可欠な体液=ユーモア


2009年06月29日

 

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「指導者たちのユーモア」村松増美


長いビジネス生活の中で、一番やりたくなかったのが同時通訳である。この仕事は、生活文化、政治経済、森羅万象、ありとあらゆるテーマが、突然前触れなく登場して、「知的瞬発力」ともいうべき技量を人さまの前で試される。

そんな神業のようなことをやってこられた大御所MMこと村松増美さんには多くのことを学んだ(こういう有名人の名前をさりげなく出すのをname droppingというのだ、ということも教わった)。

秘訣はとにかく「好奇心と勉強の積み重ね」と教わった。その「MM=笑む・笑む」と唯一張り合えたのはtie、ネクタイである。 いつも派手なネクタイをされてるのでこちらも負けずに、お会いする時はイギリス生まれのNPOSave The Children」の派手なネクタイをしていく。このネクタイは子どもが描いた可愛い絵をデザインしたもので、それを買うことによって寄付となる。

その同じネクタイをしたブッシュ(父)とクリントンの二人の元大統領の写真記事がある米国地方紙に出た。「同じtie(ネクタイ)をしてるが、tie(連携)はしない」というシャレはアメリカ人らしいユーモアだ。そして「二人はsportしている」とある。 「?」と思って辞書を引くと「見せびらかす」とあり、「いい奴」という俗語もある。 なるほど「自分は社会貢献をしてる」と自己PRをしてるわけだ。

このsportのように誰でも知ってる言葉の裏に、まったく知らない意味をもつというのは多々ある。MMから「ビジネス上不可決」と教わった「ユーモア」もそのひとつだ。 Humorとは、辞書を引くと「中世医学での4体液」、即ち、blood (血)、phlegm(粘液、冷淡)、 choler(かんしゃく、怒り)、melancholy(憂鬱)とある。これはわかるような気がする。

楽しい終末が終わり、憂鬱な月曜日blue Monday。I have a bad humor.というからhumorという言葉の意味は深い。カーペンターズのRainy days and Mondays always get me down.という憂鬱な気分と同じだが、downが羽毛をも意味するとはこれ如何に。

Humorはラテン語ではumor湿気を意味し、humid (humidity湿度、 humiliation侮辱・屈辱、 humility謙遜)、つまりhumorとhumidは同じ語源だ。

こんな風に中世まで遡って考えるとchemistryの「仕事上の相手(同僚、得意先)との馬が合うか」という意味も理解できる。 本来の意味は「化学」だが、どうやらお互いの化学反応がうまくいくかどうか、お互いの気持ちがしっくりするgo well withかといったことであろうとは想像ができる。

ビジネスも含めて人生には浮き沈みがあり、humiliateイライラさせられることも少なくない。そんな時いつも持っていたいのがlatitude。これは緯度のことだが辞書を引くと「ゆとり、あそび」ともある。

ヘミングウエイによると、「勇気」の定義はCourage is grace under pressure。 苦境にあっても「優雅さ、ゆとり」を失わないことである。 やせ我慢とも違う「武士は喰わねど高楊枝」。Latitudeをもったgood humor(気持ちのよい)のsport(いい奴)。「男の美学」という表現がピッタリだが、gender free(性差のない)の精神からは外れるかもしれず、要注意である。

(社)日本在外企業協会 「グローバル経営」より転載・加筆

■ 関連サイト
・紀宮とNGO――「子ども達を救おう」運動
・同時通訳の大御所「笑む・笑む」さんの喜寿の会