2012年1月4日
米国NYマンハッタンでのOWS(Occupy Wall Street)運動に連動しての世界規模での格差是正運動⇒アラブの春という図式が巷間報道・解説されているが、筆者はそれに疑問を呈した。「1%の超富裕層がさらに富を増やす」ことへの非難もわかるし、7人に1人、つまり15%が貧困層という米国の惨状も大問題だ。しかし、それが「We are tbe 99%、我々は99%(=置いてきぼりにされた貧困層)だ」という運動標語となるというロジックも不可解だ。
【第137回】2011の終わりに ~「たくましい日本」へ - 浜地道雄の「異目異耳」
中で、「アラブの春」論への違和感とともに、「独裁政治の崩壊の原因・要因は、貧困度にかかっている」という意味において、日本にとって最大の石油エネルギー供給源、サウディ・アラビアを念頭に、「アラブ革命の連鎖」はないと記した。
サウディ・アラビア皇太子死去に思う国際重要事項 - JanJanBlog
神は強い |
そんな折、明けて3日の夜、「池上彰の世界を見に行く~2012年を読み解く:世界一の産油国サウジアラビア」長時間レポートに接して驚き、感動した。(TV東京)
イスラム教の三聖地(=イスラム教徒しか入れない)の一つ、メディナのギリギリのところまで接近、撮影、取材を敢行したというのである。しかも女性レポータ連れ。
コーラン |
そこからイスラム教の教え、歴史、ジェッダという古い貿易港の様子、さらに、東海岸にある世界最大のARAMCO(元々、Arabian American Oil Company)の取材。加えて、首都リヤドにおける「イスラム金融」(聖クルアーンで禁じられてる利子を取らずに、どうビジネスを展開するのか)の解説。
これは今やギャンブル化し(ビジネス実体のない)マネー・ゲームが破たんした米国の金融システムへの警鐘でもある。
税金なし |
日本(人)にとって遠い、しかし、現在の世界地政を判断する上で最も重要な中東情勢の根幹を、歴史、地理、文化、文明、現代・未来社会というテーマ・要素で網羅した、完璧な報告・解説であった。
サウディ・アラビアはイスラム教の聖地・本山のある国、ということに加えて、そこでは「税金:なし。福祉:無料。教育:無料。医療:無料。住宅:無料」。このことを知れば、「アラブ革命の連鎖」を主張することはあたわない。
ジェッダ |
福島原発事故後、活発になった「脱原発」論は、電力エネルギーが現在の社会生活に不可欠である以上、又、代替エネルギーが実現してない以上、炭化水素エネルギー(石油、ガス、石炭)とのバランスで論議されねばならないものなのだ。
日本(人)は世界最大の産油国、サウディ・アラビアのことをあまりにも知らなさすぎる。
「2012年を読み解く」に当たり、「安全と安心」について、ことに後者はすぐれて人のこころの問題。「情報不足」を非難する向きが多いが、実は安心とは情報の量ではなく、「情報の質とその分析・評価(=受け手の姿勢)」に依る。
石油生産 |
池上氏は最後に「日本(人)はもっと世界を知ろう」といった意味の総括をしたが、まさにそれは「グローバライゼーションを恐れずに」「たくましい日本(人)」「信頼の国、日本」を目指そうという筆者の主張の根にあるものだ。
因みに、常々、池上氏の「わかりやすい解説」には感心するものだが、一点、注文がある。昨年末の上質の「TPP解説」においては「(農業を中心に)関税障壁」が解説されたが、もっと重要でかつ多岐にわたる「非関税障壁」の解説もほしかった。
イスラム金融 |
なかんずく、「ISD = Investor-State Disputeに提訴条項」が言及されたが、このISD提訴は「被害額を法的に、論理的に証明する」ことが前提である、という重要点を指摘してほしかった。