浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第137回】2011の終わりに ~「たくましい日本」へ

 

2011年12月31日

 

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Midtown New York

年末、2011年の最後にどうしても書いておかねばならない。

まずは、9月17日に米NY市のウォール街近く(WTCの近くでもある)の「ズコッティ公園」にて発生、日本を含む世界に発展したと言説されるOWS(Occupy Wall Streetウオール街を占拠せよ)運動の様子について、だ。

いくつかの報道によれば、そこより、マンハッタン内でのデモに発展、さらに全米各地に飛び火、さらには、折からの「アラブの春運動」とも呼応して世界各地に広がったとのこと。日本においても「オキュパイ運動」に発展したと報道されている。

さて、マンハッタン・ミッドタウン、それもど真ん中、五番街における上の写真をご覧あれ。OWS運動(=デモ)が活発化と報道された時期、10月9日(日)。一見、まるで、デモ抗議のように見える。

しかし、これは実に楽しい、アメリカ人らしい陽気なパレード(出番待ちの待機中)だ。コロンバス・デーの前日、ヒスパニック・デーの集まり。スペイン語公用語としている世界21カ国が参加してる大パレード。なぜかアルバニアが参加しており、同国に無関心ではおられない(後述、北朝鮮との類似性)筆者は、大群衆に交じってシャッターを押した。当日バーンスタイン・NYフィル(小澤征爾)DVD試写会の会場近くで、交通渋滞(というより五番街閉鎖)にあって、大変な思いをしたわけだ。

【第139回】「NYフィル、バーンスタイン・小澤征爾」映写会報告 - 浜地道雄の「異目異耳」

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OWS運動(=デモ)が活発化と報道された時期だが、この同じマンハッタン島での「大騒ぎ」は参加者1万人、観客100万人以上と言われ、まったく無縁のものだった。

ただ、筆者としてはOWS運動は聞いており、これも無関心ではおられず、前後、ズオッティ公園を訪れた。数百人と思える(昔の言葉でいえばヒッピー風の)若者たちが、寝袋を持って寝泊りをしていた。

中に、リーダーを中心にヨガのレッスンも行っているグループもある。 のんびりしたとは言えないにしてもまさに「ボヘミアン風の」生活をエンジョイしてるかのようであった。

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日本に、帰国後、多くの人から「NYは大丈夫でしたか? 危険はありませんでしたか?」と聞かれていったい何のことかといぶかったほどだ。ことほど左様に、(日本でのデモ映像を含めた)報道・解説と現場の様子(緊張感)には大きなギャップがあった。

さて、OWS運動が連携している(とも言う)「アラブの春」報道・解説についても、長く中東イスラム圏でビジネスを通じて生活体験をしてきた筆者は大いなる違和感を禁じ得ない。

まず、揚げ足をとるようだが「アラブの春」というネイミング。中東の多くの国は「暑い」地域だ。「プラハの春」すなわち、チェッコ・(東)欧州での雪解け⇒解放をもじったものであろうが、アラブには当たらない。欧州・北米感覚では確かに寒い・灰色の冬が去り、続く春こそ「解放」の季節である。が、中東アラブにあっては「春」は必ずしも喜び・解放という感覚はない。

より重要な点として、「民主化」運動の解説だ。拙稿においてはイスラム社会での「死生観」と合わせて「民主化」という社会(文化)価値観のギャップを指摘した。 この意味では、「アラブ革命の連鎖」はない。     

サウディ・アラビア皇太子死去に思う国際重要事項 - JanJanBlog

「独裁者の失脚」「独裁政治の崩壊」の原因・要因は、人権・自由といった人民の主義主張もさることながら、詰めて言えば、それ以上に「国民を食べさせることができるか」、つまり、貧困度にかかっている。その貧困から這い上がろうとする市民運動をリードし、束ねる組織が前提だ。フェイスブックツイッターで、政府転覆というまでの人民の結束・行動というのは考えにくい。

チュニジアは一応産油国のカテゴリーには入るが、人民一人当たりのGDPは極端に低く、イエーメン、エジプト(さらにシリヤ)については産油もなく、人々は貧困である。

リビアについては「貧困」による民衆蜂起というよりは、「大量殺人をしたカダフィ」を抹殺するという西側(フランス)正義感の独断による攻撃が主たる要因であり、ビンラーデンを犬を使って殺害・水葬にした米国の独断と同じである。

【第134回】ビンラーデン殺害に犬が活躍!! - 浜地道雄の「異目異耳」

1%の超富裕層の富が増大を続ける一方、国民の7人に一人、4,350万人が貧困の状態にあるという米国の惨状。確かに、システムを変えねばならない。

翻って日本も社会システムの改善が不可避である。東北震災、福島原発放射能)、TPP問題。

大きな課題を抱えての2012年。それには「変革」「(見えない)危険」をめぐる内外の情報を冷静に受け止め、分析する姿勢が前提である。ことに、放射能およびTPPにみる後者「(見えない)危険」について強調したい。

TPP賛否論、再点検 - JanJanBlog

今年の言葉「絆」=信頼であり、そこでは市民一人一人の知力こそが鍵であり、その集合体としての「たくましい日本」が激動の世界における国のかたちであろう。

 

関連拙稿:

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