浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第182回】1989年私のワイマール ~ 西東詩集管弦楽団

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東京・早稲田で見かけた「西東詩集」カフェー Cafe West East Divan



 

     

(2013年 9月 8日 JANJAN

 

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バレンボイムとサイードの対話

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西東詩集管弦楽団




 

バレンボイムの音楽回顧録

ワイマール!

 何と香(かぐわ)しい名。古典文化の薫り。

音楽が好きで、(チョッピリ)ドイツ語をかじった筆者には、このドイツ(旧東)、テューリンゲン州の小都市、近郊のアイゼナッハ(バッハの生誕地)やイエーナ(大学1558。シラー、ヘーゲルゲーテ、ヘッケル、マルクスなど所縁の地。光学イエーナ・ツアイスの発祥地)を含めて、某年、訪ねた静かな興奮は忘れられない。

そのワイマール(憲法)のことが麻生太郎副総理の口から出た時には、懐かしさが先にたった。

同氏は(日本の)憲法改正に絡めて「ドイツではある日気づいたらワイマール憲法ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで。あの手口、学んだらどうかね」と言ったというのだ(報道によると)。

場所は「国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)での討論会でのパネリストとして。同研究所は改憲国防軍の設置などを提言する組織であるとのこと。

この地の名を取ったワイマール文化においては、同時期にドイツ人9人のノーベル賞受賞者を輩出、うち、6人はユダヤ人であった、ということも事実である。

その文化を「退廃的」と判断したヒットラーが粛清に走った。

この地で発効されたドイツ共和国憲法=ワイマール憲法は1919年、第一次世界大戦のあとから成立。後に、1933年にナチが出現し、実質的に消滅した。

が、それは麻生副総理が述べるような「知らない間に(憲法が)変わっていた」ということではなく、全権委任法制定(=立法権を国会から政府に移す。ヒットラー独裁成立)である。

麻生副総理は(巷で言われるほど)無知識ではなく、知ってるからこそこれをもって「狂騒の中でなく」憲法改正をしよう、という発言になっている、と筆者は思う。

「熱狂的にではなく」、というのは筆者も思うところである。

ただ、現安倍政権の憲法改正にはそれこそ「ジワジワ」という感があり、大いに危惧される。

さて、本稿の主題は「西東詩集管弦楽団」である。まさにワイマールにおいて1999年、ゲーテ生誕250年のこの年、EUによって欧州の文化首都に指定されたその年、ダニエル・バレンボイム(アルゼンチ生まれのユダヤ人指揮者、ピアニスト。現在イスラエル国籍)と(故)エドワード・サイードパレスチナ生まれのアメリカ人文学者)が、アラブとイスラエルの若き音楽家たちを集めて、管弦楽団を作った。

それがゲーテの西東詩集になぞらえたThe West-East Divan Orchestraである。

「共に天を仰がず」のアラブとイスラエルの若者100余人が、演奏だけでなく、合宿練習をし、語りあい、いっしょに、郊外にあるWuchenwald(ナチによる強制収容所)にも行っている。

バレンボイムとサイードの対話「Pararerlls and Paradoxes」(監修ジュリアード音楽校長Ara Guzellimian) p7.及び、バレンボイムの自伝「A life in Music」16章「Weimar」はその記述から始まる。

折しも2020年の東京五輪開催が今朝(日本時間)決定した。

その「熱狂」ぶりはわからなくもない。

しかし、解決すべき課題としての放射能汚染がある。

また、世界の一級国たるには、文化。

そこから発する「国際政治力、リーダシップ」を西東詩集管弦楽団の日本公演、それを核とする「パレスチナイスラエル和平対話を日本で」という「平和へのとんでもない事業」の実現に踏み出してほしい。

思えば、1989年秋、ワイマール共和国の首都で、ベルリン・フィルを指揮しながら、ベートーベンのピアノ協奏曲一番を独奏するバレンボイムを正面バルコン(演奏者の背を見ながら)から聴いたのは、壁の崩壊の2週間前だった。

 

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