(2013年 9月 8日 JANJAN)
ワイマール!
何と香(かぐわ)しい名。古典文化の薫り。
音楽が好きで、(チョッピリ)ドイツ語をかじった筆者には、このドイツ(旧東)、テューリンゲン州の小都市、近郊のアイゼナッハ(バッハの生誕地)やイエーナ(大学1558。シラー、ヘーゲル、ゲーテ、ヘッケル、マルクスなど所縁の地。光学イエーナ・ツアイスの発祥地)を含めて、某年、訪ねた静かな興奮は忘れられない。
そのワイマール(憲法)のことが麻生太郎副総理の口から出た時には、懐かしさが先にたった。
同氏は(日本の)憲法改正に絡めて「ドイツではある日気づいたらワイマール憲法がナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで。あの手口、学んだらどうかね」と言ったというのだ(報道によると)。
場所は「国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)での討論会でのパネリストとして。同研究所は改憲と国防軍の設置などを提言する組織であるとのこと。
この地の名を取ったワイマール文化においては、同時期にドイツ人9人のノーベル賞受賞者を輩出、うち、6人はユダヤ人であった、ということも事実である。
その文化を「退廃的」と判断したヒットラーが粛清に走った。
この地で発効されたドイツ共和国憲法=ワイマール憲法は1919年、第一次世界大戦のあとから成立。後に、1933年にナチが出現し、実質的に消滅した。
が、それは麻生副総理が述べるような「知らない間に(憲法が)変わっていた」ということではなく、全権委任法制定(=立法権を国会から政府に移す。ヒットラー独裁成立)である。
麻生副総理は(巷で言われるほど)無知識ではなく、知ってるからこそこれをもって「狂騒の中でなく」憲法改正をしよう、という発言になっている、と筆者は思う。
「熱狂的にではなく」、というのは筆者も思うところである。
ただ、現安倍政権の憲法改正にはそれこそ「ジワジワ」という感があり、大いに危惧される。
さて、本稿の主題は「西東詩集管弦楽団」である。まさにワイマールにおいて1999年、ゲーテ生誕250年のこの年、EUによって欧州の文化首都に指定されたその年、ダニエル・バレンボイム(アルゼンチ生まれのユダヤ人指揮者、ピアニスト。現在イスラエル国籍)と(故)エドワード・サイード(パレスチナ生まれのアメリカ人文学者)が、アラブとイスラエルの若き音楽家たちを集めて、管弦楽団を作った。
それがゲーテの西東詩集になぞらえたThe West-East Divan Orchestraである。
「共に天を仰がず」のアラブとイスラエルの若者100余人が、演奏だけでなく、合宿練習をし、語りあい、いっしょに、郊外にあるWuchenwald(ナチによる強制収容所)にも行っている。
バレンボイムとサイードの対話「Pararerlls and Paradoxes」(監修ジュリアード音楽校長Ara Guzellimian) p7.及び、バレンボイムの自伝「A life in Music」16章「Weimar」はその記述から始まる。
折しも2020年の東京五輪開催が今朝(日本時間)決定した。
その「熱狂」ぶりはわからなくもない。
しかし、解決すべき課題としての放射能汚染がある。
また、世界の一級国たるには、文化。
そこから発する「国際政治力、リーダシップ」を西東詩集管弦楽団の日本公演、それを核とする「パレスチナ・イスラエル和平対話を日本で」という「平和へのとんでもない事業」の実現に踏み出してほしい。
思えば、1989年秋、ワイマール共和国の首都で、ベルリン・フィルを指揮しながら、ベートーベンのピアノ協奏曲一番を独奏するバレンボイムを正面バルコン(演奏者の背を見ながら)から聴いたのは、壁の崩壊の2週間前だった。
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