2011年5月8日
米軍部隊によるビンラーデン殺害作戦は領域侵犯ではないのか?という問題提起をしたところで、またまた驚愕した。 その作戦に軍用犬が活躍、というのだ。(ロイター・産経)
「作戦決行後、オバマ大統領との面会も果たした」とのことだから、英雄的にとらえているのだろう。
ところが、イスラム圏では犬は「神に逆らった動物」として忌み嫌われている。我々日本人(だけでなく多くの国々でも)には理解できないことだが、ペットで飼うなどもってのほか。それが彼らの「文化」なのだ。「絶対生活訓」なのだ。
あろうことか、その犬をしてビンラーデン殺害に率先させたというのだ。その犬をオバマ政権は英雄視してるというのだ。
イスラム教徒が犬を忌み嫌う根拠の一つは預言者ムハンマド(モハメッド)が、マッカ(メッカ)で異教徒の迫害を逃れ岩場に隠れていた時に犬に嗅ぎつけられてしまったことにある。
その情景がピッタリ一致する、異教徒による恐ろしい仕業(しわざ)と映るのだ。
「水葬」もしかり。 ビンラーデンの遺骸はヘリでペルシャ湾に運ばれ、待機していた戦艦カールビンソンから、沖合に「投げ捨てられた」。
イスラム教(だけでなく、キリスト教でユダヤ教でも、旧約聖書を信じるもの)では土葬されて、復活を待つのだ。
筆者はイスラム教徒ではないが、長い中東イスラム圏とのビジネス上の付き合いを通じて体感したこと。
グローバル化の時代。「異文化理解」ということがしばしば登場するが、文化は「それぞれ異なるということを理解」すること、と筆者は定義している。
お互い異(ちが)うのだということ。お互い異(ちが)うから魅力があるのだ、ということだ。
「文化って憧れみたいなもの」(佐藤忠義:「ねがいは『普通』」) 「異文化理解の欠如」がことを深刻化させているということ、加えて、それを武力で解決しようというのは不可能なことを、悟らねばならない。
イスラム教預言者ムハンマドを犬に模した風刺画を制作、殺害予告などを受けていたスウェーデンの芸術家もいるし、デンマークの日刊紙にムハマッドの風刺漫画が掲載されたことから外交問題にまで発展したこともあるし、また、米国フロリダ州のキリスト教団体がイスラム教の聖典を燃やす計画についての騒動など、記憶に新しい。
号外まで出た大ニュースのビンラーデン殺害。その世界情勢に与えるインパクトは小さくなく、連日メディアが解説している。しかし、その核にある「文化」「宗教」「ギャップ」「武力」についての言及、解説は少ないので、敢えて、再掲する次第。
ロイター配信記事:
襲撃作戦で軍用犬も活躍
2011.5.7 23:01
米軍特殊部隊を〝補佐〟した軍用犬。ウサマ・ビンラーディン容疑者の潜伏先を急襲した作戦で活躍した(ロイター)
米メディアは7日までに、国際テロ組織アルカーイダの指導者ウサマ・ビンラーディン容疑者がパキスタンの潜伏先で殺害された際、急襲作戦を担った米軍特殊部隊に軍用犬が加わっていたと報じた。
爆弾の臭いをかぎ分けたり、パラシュートで空中から降下したりするなど特別な訓練を受けた軍用犬のうち、最も能力があり実戦での経験が豊かな“エリート犬”が選ばれたとみられる。素顔はベールに包まれており、米国内でどんな犬だったのか話題を呼んでいる。作戦決行後、オバマ大統領との面会も果たしているという。
因みに:ビンラーデン殺害をWHで見るオバマ政権 (写真)