2011年5月2日のこと:
アルカイダの指導者ウサマ・ビンラーディンを「米国が実施した作戦で殺害した」という一日夜のオバマ米大統領の緊急声明には驚いた。
ここでの「正義は遂行された」という雄弁ぶりと、市民の熱狂ぶりの画像をみて、すぐに想起したのはブッシュ前大統領の対イラク侵略時や*、フセイン元大統領の処刑を行った際の勝ち誇った姿だ。
*しかも、イラク侵略(2003年3月~)は「カーブボール」というペテン師に騙されての愚挙であった。(それを小泉純一郎元首相、安倍晋三前首相は熟知)
【第95回】 「カーブ・ボール」の大罪 - 浜地道雄の「異目異耳」
「十字軍」「ミレ二ウム(千年紀)」というキリスト教の立場からの正義を誇ったわけだが、すべて軍事(武力)による異文化否定という、混迷の根となった。
ビンラーデン殺害のインパクトについては、多くの識者・専門家の解説がなされようが、筆者がもっとも注目し、恐れるのは「遺体を海で水葬にした」という箇所だ。 (地上だと、遺体奪回があったり、墓参りに来るということらしい)
「人は死ぬと地に還る」というイスラムの教え(キリスト教聖書にもそうある)に従って、イスラム圏では土葬だ。この「鉄則」を異教徒が破ったということになる。
サウジアラビア西海岸の歴史的港町、ジッダの旧市街に小さなロータリーがある。そこを通ると運転手が「ハヴァ(=イブ)の墓」だという。市民に聞くと最初の人類「アダムとイブ」のイブだという。ではアダムの墓はどこだと聞くと、遠くインドのほうだともいう。ともあれ、全く何気ない一区画だ。
同じくサウジアラビアの首都リヤド。出張中だった1975年3月25日は筆者には忘れられない。名君ファイサルが甥に暗殺されたのだ。後年、訪れた旧中心部の一角に墓地があり、そこにファイサル国王も埋葬されているという。非回教徒の筆者は中に入ることはできないが、別に何ということもない一角であり、普通に考えられる廟や碑の類は見えなかった。
ここではどんなに偉い人物であっても、アッラー神の下(もと)にあっては、人は平等であり、死ぬとそのおぼしめしに従い大地に還っていく、ということだと強烈な印象を持った。
この「絶対教義」から外れた今回の米軍部隊の仕業(しわざ)に、残るアルカイダを中心にその支持派や親派の、オバマ大統領をリーダとする「異教徒暴力者」への反発は倍旧となるであろう。
聖コーラン(クルアーン)は2章 牝牛 186節で「汝らに戦いを挑む者があれば、アッラーの道のために堂々とこれを迎え撃て」と命令している。
但し、「こちらから不義を仕掛けてはならぬぞ」ともある。
また、2章 牝牛 188節、189節に「しかし、向こうが止めたら(汝らも手を引け」とある。
関連拙稿:
文化(文明でなく)の衝突:勝てない戦い
IIST WORLD FORUM No092-0375-j 文化(文明でなく)の衝突 ― 勝てない戦い − *浜地 道雄