浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第143回】「仕事で使える英語」への提言(後) スピーキングテストVersant

 

2011年5月12日

 

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英語が「話せない」で不自由したと語る益川教授 (NHK-TV)

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「適正な測定なくして改善なし」。

品質管理を中心に、戦後の日本企業復興に貢献したデミング博士のことばだ。

工業製品(Hardware)を作るのと完全に一緒にはできないにせよ、英語教育においてもある種の「測定」は向上心や励みということを考慮すれば、意義があろう。

それも適正な測定が。

あるデータによると、日本で受験できる英語関連テストは56種類も挙がっている。

日本で受験可能な英語検定試験の種類 | 英語上達の道標 ENGLISH QUEST Group

うち、海外で操業する日本企業で圧倒的なのはTOEIC (Test Of English as International Communication)で、入社試験や昇進の条件となっている。日本と韓国で年間300万テストというのだから凄い。

ところが、これを「TOEIC信仰」としての批判も少なくはない。

社会・文化 | 【公式】三万人のための総合情報誌『選択』- 選択出版

http://business.nikkeibp.co.jp/article/topics/20100908/216145/

既述、日向清人氏はTOEICが挙げる下記三点についての疑問を詳細に分析している。

日向清人のビジネス英語雑記帳:スペースアルク

(1) 絶対評価か? (2) グローバルスタンダードか? (3)「コミュニケーション英語能力」を正確かつ総合的に評価できるか?

特に、ここでは「読む」「聞く」ことで、コミュニケーション能力を測定できるのか、という問題提起だ。 やはり、「仕事で使える英語(力)」については「話すSpeaking」力が重要な要素だ。

「口頭英語力」(スピーキング、リスニング)は日本人の不得意とするところだが、方言の大家、故平山輝男博士は、「言語は音声です。音声言語が言語です」と喝破している。

そこで、TOEICの重要な補完役としてのスピーキングテストVersantがある。

http://web.disc.co.jp/sp/versant/

電話またはPCでシリコンバレー(Menlo Park)に置いてある膨大な音声認識にアクセスし、10 分余、コンピュータと問答をすることで、膨大な音声データベースが認識アルゴリズムを使って、直ちに「発音」「流暢さ」「語彙」「文章構文」における能力を個別に診断し、リスニング、スピーキング能力を測定する。

人間が採点する場合には、主観がはたらくが、自動採点では、文字通り客観的(私情を交えない)な評価が得られる。 前述、日本で受験できる英語関連テストは56種類に名が挙がってなく、知名度が低いわけだが、在日アメリカ大使館での職員採用時の英語力評価としてリンクが張られている。http://japan2.usembassy.gov/e/info/tinfo-jobtips.html

又、大阪市立大学では全学用に導入されている。

http://www.rdhe.osaka-cu.ac.jp/publications/dayori/dayori_005.pdf(最後のページ)

2006年、筆者が事務局長を務めたスピーキングテストフォーラムが開催された。

英語スピーキングテストフォーラム2006 [ビジネス英会話] All About

そこでの、早稲田大学法学学術院原田康也教授のコメントはまさに「(仕事で)使える英語力」を指している。

「本来、英語能力検定試験というものは、受験勉強のごとく、点数を取ることが目的のような日本のテストのやり方、またそのための英語教育ではなく、身体検査のように考えるべきであると指摘していました。体温、温度、距離、重さのような測定数字を我々は生活感として直ちに理解する。それに応じた営みをする。さて、英語学習者はテストの数字を体感として瞬時に受けとめられるか? それがまさに「(使える)英語力」に直結するはずだ。」