浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第125回】イスラームの花嫁(アフガン難民)

 

2005年7月7日

 

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毎日5回のお祈りと、コーラン読書を欠かさない

9.11 以降の中東情勢は、身近な人間を知ることでより理解できる。典型的な例が2人のアフガニスタン難民。壮絶な人間ドラマがそこにある。

 

9.11 以後の中東情勢については、もうあふれるばかりの有識者、専門家の解説注釈があるが、それよりも、身近な生活、文化、人間像を知ることで、より理解できる。典型的な例が2人のアフガニスタン難民の話だ。壮絶な人間ドラマのことである。  

https://web.archive.org/web/20031006045423/http://www.sankei.co.jp/pr/seiron/koukoku/2003/0303/ronbun-3.html

前者の「元駐日アフガニスタン大使」については下記JanJanにて報告した。  

【第129回】元アフガン大使、難民状態から永住権へ! - 浜地道雄の「異目異耳」

【第130回】アフガニスタン侵攻失敗の教訓・ハッサーニ氏の思い - 浜地道雄の「異目異耳」

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50年前の花嫁姿(もう一人の妻がいるとは知らず)

後者の「イスラームの花嫁」について、近況を報告する。JFK空港近くでアフガニスタン人難民として生活する八木美津子さんはすでに82歳。それでも矍鑠(かくしゃく)として、お元気。毎日5回のお祈りを欠かさない、敬虔な回教徒である。  

長く同居してきた「亡夫のもう1人の妻」はすでに高齢ゆえの衰えで別所におり、ただ、今は1人住まい。でも、近所の子供らと孫との行き来もあり、「現在が一番平安」というスカーフ姿の彼女はまるで菩薩のよう。  

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昭和30年のパスポートの発行は重光葵外務大臣(当時)

50年前の新婚当時、海外を船で旅行したり、考えられないほどの「ハイカラ生活」があったと同時に「もう1人の妻」という筆舌に尽くしがたいカルチャー・ショックがあった。  

そして、ソ連進攻による、海外脱出。逃避行。亡命。その間、懐かしいアルバムと共に片時も離さなかったのが「コーラン」。この壮絶な人間ドラマは「国際結婚 イスラームの花嫁」(泉久恵、海象社)に詳しい。  

https://www.amazon.co.jp/国際結婚イスラームの花嫁-泉-久恵/dp/4907717105

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国際結婚 イスラームの花嫁」(泉久恵、海象社)

タリバンを初め、テロリストを「イスラム教の教えとはまったく異なる」と強く非難する八木さんは「この教えがあるからこそ、自分は今、平穏でいられる」と繰り返し強調する。  

宗教心をなかなか理解できないわれわれ日本人ではあるが、しかし、「理解しようという心、姿勢」がなくば、国際問題は永遠に日本人からは遠い存在である。何も高邁・難解なことではなく、文化=日常生活、風土といった、人間にとって自然で当たり前の所作の話ではある。  

ともあれ、彼女の元気なうちにぜひ一度は故国日本の土を踏ませて上げたい。