浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第27回】 Wheel(輪)の後(うしろ)とは?


2011年02月02日

 

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人知・人力が及ばないという意味でFather Time(父なる時間)とならびMother Nature(母なる自然)というのは深遠な表現である。母は「産むDelivery」という重要な営みをする。慈愛に満ちた母も時には怒る。
父(=時間)に1923年(大正12)9月まで遡ってもらうと、関東大地震を起こしてる。

東京市は緊急対策としてT型フォード800台を輸入。1908年(明治41)にフォード社が発売したT型車はここでは「円太郎バス(Omni-Busラテン語)」として落語にも出てくる人気者となり、日本人の自動車に対する認識が一変、評価が高まった。
そして、日産自動車の前身Datsonが1926年、豊田自動織機の自動車部が
独立してトヨタ自動車として誕生したのが1937年。かくして「Mother Natureがnew comer(新生児の意味がある)、自動車産業を産んだ」というのは筆者の楽しいsophismこじつけである。

車にまつわる話は枚挙に暇がないが雑記する。
和製英語」は要注意。フロントガラス=windshield、アクセル=gas pedal、バックミラーはrearview mirror と言わないと通じない。クラクションとは「叫ぶ」を意味するギリシャ語klazōを使った「商標」klaxonであり、アメリカではhornと言わないと通じない(事務用品のホッチキスも商標だが、staplerと言わないと通じないのと同様)。 ところが中東ではklaxonという。

プラントの全請負契約turn key とは装置が完成して鍵さえ
回せば稼動開始ということだから、まさに自動車のイメージである。
ハブ(Hub)空港とは、車輪のspokeでつながった中心の車軸。
ボストン市はHub(世界の中心?)と自称している。

自動車はcar、automobile、 motorcar、 vehicleと呼ばれる。automobileのauto は「自動」と勘違いされるが「独立して」の意。 autoすなわち「(線路なしで)独立して自由に動く」という意味。
「車の両輪」を訳するとtwo wheels of a carとなろうが、自転車bi(2)-cycle(輪)なのか? もっとも、car の語源はケルト語のcarr(二輪戦車)だそうだ。

最盛期のデトロイトの車産業を描いたアーサー・ヘイリーの企業小説も「Wheels」(1971)と複数になってるが、これは勿論「四輪車」だ。
文中、D/A(Dis-Assemble=解体)手法で工員がガラクタとけなした日本車が今や逆転。世界のトップになったのは隔世の感がある。

アメリカで免許を取るのは近所のDMV(Department of Motor Vehicle)。
motor というと、日本人は電気モーターを思うがmotor vehicle は「運搬車」の総称。vehicle(乗り物)の語源はラテン語vehere(運ぶ)。
実技試験で言われたbehind the wheel(車輪のうしろ?)の言葉がわからない。しかし、ハンドル=steering wheelだと知り、船の舵輪(だりん)の後に立つことを考えると「操縦をする」ことだと納得がいく。

(社)日本在外企業協会 「グローバル経営」より転載・加筆