2016年04月25日
出典: NY Times via Trainjotting |
さあ、緊張の一日、仕事が終わった。「お疲れ様」と、これは中々英語にしにくいがまあ一応Good work we did!
そこで、ちょっと近所で一杯といきたいところだが、ここはNYCのマンハッタン。Japanese-Style Barというのはあっても居酒屋とは違う。事務所から一路、通勤電車の発着駅、グランド・セントラル・ステーションに向かう。クラシックな構内を見下ろすStanding Barもあるし、食事もできるOyster Barでは生牡蠣すら食べられる。
が、ここではともあれプラットフォームに直行、「バーカー」に乗車し一段落。Bar-Car、即ち、一車両がバーになってて、ビールなりウイスキーなりジンなりを注文し、ゆったりとする。
そして、その日の書類に目を通し、新聞を読み、或いは家族の待つ郊外の町までの美しい田園風景を楽しむなり、くつろぎの時だ。
ふと考えて見る。Barって何だろう?勿論、棒・横木(バー)だ。
チョコレート・バーや手すり。高跳びのバー。楽譜でも小節ごとにバーがある。
仕事上もset the bar 高い水準を設定し、バー・チャート(棒グラフ)で推移を見る。コンピュータでもスクロール・バー、バー・コード。いずれも「棒(状)」だ。
そのBarで「遮(さえ)ぎる」というところからa bar to success成功への障害。はたまたbar the entrance入口閉鎖、bar a gate閉門、或いはbar from smoking禁煙といった動詞にもなる。
bar/barring =(何々を)除いて、という前置詞的使い方もある。 bar noneとは「none(無)を除いて」から⇒「例外なしに」だから凝った言い回しだ。
だが、その「棒・板」がどうして酒を飲むところなのか?
I'll wait you at the bar.と言うし、レストランではWould you like to sit at the bar or a table? と聞かれることもある。
ものの本によると、イギリスでは酒場はタバーンやインの中に存在した。やがて、その食堂兼酒場が独立し、誰でもが自由に出入りの出来るパブ(Public House)になっていく。新大陸のアメリカにもその酒文化がもたらされた。
西部劇でお馴染のサローンでスイングドアーを開ければ、そこは荒くれ者からカウボーイ、商人、市井の人々が集い、娼婦たちさえ出迎えてくれる。酒場にして賭場。
だが、もともと酒場には、バー・カウンターはなかったようだ。
Bartender(Bar +Tender世話人)に聞いたところでも「西部開拓時代。当時の酒場では樽から酒を注いで売っていたが、勝手に自分で注ぎ飲もうとする不埒な輩がいて、これを防ぐために酒樽と客の間にバー(棒)を置いたのがきっかけ」とか。「乗ってきた馬を繋ぐために店の外にバー(棒)があった」という説もある。日本語でいう立ち飲みはさしづめStanding Barであろう。
さて、海外とのビジネスで不可欠なのが弁護士で、一般的にBarと称され、裁判所という意味も含まれている。語源については様々な説があるが、裁判で証人台の所に置かれたバー棒を持って証言することに由来すると言われてる。
また、裁判の法廷と傍聴席を分けるバーから来ているという説もあるが、behind the Barというと、鉄格子(バー)の中、監獄だ。
少し注意を要するのはアメリカの司法試験bar examinationは州ごとに独立している。いわゆる連邦Federal、アメリカ合衆国としての資格はない。そのため、州を選び、その州の受験することになる。ゆえに、一般的に外国人と訳されるforeignerはアメリカの法律用語ではその「州以外の弁護士」を指す。
そんな風に、色々考えながら都会の喧騒を離れて小一時間。軽井沢をさらに美しくしたような郊外の駅に着く。
4月、極寒から一転、素晴らしい春だ。Bar none例外なく。
一般社団法人日本在外企業協会「月刊グロ―バル経営」(2016年4月号)より転載・加筆。
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