浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第63回】 Flowerの華々しいグローバル化


2014年05月28日

 

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Rose Scepter'd Isle バラ セプタードアイル by T.Kiya, on Flickr

米国は車社会だ。そこで質問:「米国の国花は?」。こういうRiddle(なぞかけ)は、英語力に直結しており、我々Non-Nativeには中々難しい。
が、Car-Nationと答えられれば上出来。これをおやじギャグとバカにしてはいけない。これは立派な言葉遊び、シェクスピア以来評価されるRhyme (韻を踏む)だと主張したい。

Carnation(カーネーション)とは、シェクスピアの時代に冠飾り(coronation flower)に使われこれが転訛したという説がある。花がギザギザしているところからラテン語corona(冠)から派生して「王」が連想されたとのこと。
或いは肉(ラテン語Carnからcarnal、カーニバル、謝肉)色の花という説もある。あのピンク色が「肉」の色を連想させ、carnationとなったよし。確かに辞書には「肉色」ともある。

では実際の米国の国花は? Roseバラだ(州によって異なるが)。フィリッピンエストラーダ(元)大統領の好きな花だ。というのもちょっとした裏話(真偽のほどは別にして)がある。 同国はエリート社会で、(完璧な)英語ができるということが条件。同大統領は俳優出身でそういう意味ではエリートではなかったが、大衆からの人気があった。
ある記者会見で質問された。「好きな花は何ですか?」と。Chrysanthemum菊と答え、意地悪な記者がどういうスペルか?と聞いたに対して、答えに詰まった大統領は「私が好きなのは本当は菊ではなくバラRoseだ」と答えた由。失笑を買ったと伝えられているが、否、正直でよろしい、とさえ筆者は思う。

さて、そのChrysanthemumは勿論日本の皇室の象徴、我々日本人になじみの深い「菊」。Chrysanthemumとはもともとは「黄金の花」という意味。ギリシャ語でanthemonは「花」。このanthemonに「金」を意味するギリシャ語khrusosが語頭につき、khrusanthemonとなったものがラテン語に入りchrysanthemumとなった。
フィリピン大統領ならずとも長いし発音が難しいから、NYの街角の花屋では略してMumという。Mumとは「お母ちゃん」という意味だから、豪州では母の日にはカーネーションではなく菊を送るとも聞く。

ものの本によると、人類が最初に会った文化は「花」とのこと。
ネアンダール人の墓(13万年前)に花の種が発見され、「死者への手向け」だった由。確かに人間だけが花を愛でるようだ。だから、上記、バラ、カーネーション、菊という三大花をはじめ、花にまつわる話は枚挙にいとまがない。

そして、それが何気なく日常生活に入り込んでるというその裏は、実は大変なビジネスである。その元祖は遠く(トルコ⇒)オランダのチューリップから、今や「花」は冠婚葬祭を中心に、グローバル・ビジネスになっている。

確かに(いつ需要があるかわからない)葬式用の花など、サイズと色が揃った生花を場合によっては海外から運んでくるという、その緻密なロジスティックは驚異的だ。

そしてまた、その種苗(Seeds and Sapling)が一大国際ビジネス。
そのカーネーションの最大の供給者がサントリーで、近年青いカーネーションも開発したとか。キリンというのも一瞬「?」と思うが、考えてみればビールのホップや麦芽の栽培・品質改良というところに根があると思うと得心がいく。

遺伝子組み換えというと、食品の安全性という点からTPP論争でも問題になってるが、美しい花はWelcome!だ。もっとも、Every rose has its thorn.
美しいバラにはとげがあるから、要注意ではある。

一般社団法人日本在外企業協会「月刊グロ―バル経営」(2013年9月号)より転載・加筆。

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