浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第52回】 Dance Until It Rains  成功の秘訣


2013年06月20日

 

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Singin' in the Rain - 雨に唄えば(Wikipediaより)

6月。雨の季節だ。

Rainにまつわる米国の習慣で興味深いのはRain Check(=小切手)。野球など野外スポーツ観戦で雨天中止になった時に、客に配る「次回に使える無料入場券」。

そこから転じて、音楽会や映画に誘われ、都合が悪い時は Can you give me a rain check? とか Can I take a rain check?といってやんわり断ることができる。が、それも何度も続くと意図が見透かされるかもしれない。大事な約束の時には I will be there rain or shine(万難を排して)と言おう。

そんなデートを重ねて、晴れて結婚となったら、6月の花嫁。June bride は幸せになれるという。Juneの語源Junoは、ローマ神話の結婚をつかさどる女神で、主神ジュピター(ギリシャ:ゼウス)のお妃ユノ(ギリシャ:ヘラ)のこと。

たしかに、米国では5・6月は大学の卒業式。学生時代からの付き合いからの結婚も多かろう。気候はよいし、白い四つ花 Chinese Dog Wood の清楚さは結婚式につきもの。Happy is the bride on whom the sun shines ということばもあるくらいで、花嫁は太陽の下、輝いてる。

ところが、6月は日本では雨季。June bride は当てはまらない。6月はしかも祭日はないし、五月病から抜けきってない人もいる。

カーペンターズも「♪Rainy days and Mondays always get me down♪ 雨の日と月曜日はいつも滅入ってしまう」と歌ってる。 でも(故)松下幸之助翁によれば、月曜日こそ本当は張り切るべき日だ。

それに、雨だって悪くない。Singin’ in the rain(1952)。 ミュージカル映画で、ジーン・ケリーが土砂降り(Cats & Dogs)の中でタップダンスをしながら歌う名シーンは楽しい。「雨の中、歌い踊ればハッピー」と逆転の発想で、英語の勉強にもなる。五月病なんかどこかに飛んで行こう。

それも、「マック」があれば上出来だ。といっても、ハンバーガMcDonald'sでもなく、アップルのMacintoshコンピュータでも、1890(明治23年)にカナダから札幌農学校に寄贈され「旭」命名されたリンゴMckintoshのことでも、今はネスレ・グループのお菓子Mackintoshでもない。スコットランド人Charles Mackintosh (1766-1843)は織物の裏にゴムをひき、織布を張り合わせて作った耐水布地で、レイン・コートを作り大ヒット。そこから一大ブランドに発展し、近年、日本にも進出している。

「空、雨、傘」はコンサルタントの仕事の基礎とも言われる。「空(もよう)」とは事実関係、情報やデータ収集。「雨(か?)」とはその事実把握を元に、状況の分析解釈。そして、その結果をもとにとる解決策を「傘」という。当たり前と言えば当たり前だが、この分析過程から行動への直観、判断、流れが大事だ。

興味深いのは、弁護士業を扱ったコッポラ監督の映画「The Rainmaker レインメーカー」。弁護士志望の若者がある弁護士事務所で知ったのが大口の顧客を持ってるパートナ―。ビジネスでもっとも大事なのは「収入」。これをガバガバ稼ぐ人物のことRain Makerという。「雨を降らす人」とはあまりピンと来ない表現だが、語源は元々ネイティブ・インディアンの「雨乞い師」、つまりここでは「恵みの雨」をもたらす人だ。しかし、実際の社会では雨のごとく金を降らせてくれることはない。雨を降らすだけでは、ビジネスは成り立たない。土地を耕し、種をまき、維持して、そして収穫する役目もなければならない。それこそが「パートナーシップ」「ティームワーク」ということができよう。

100%成功する雨乞い師がいるという。他の雨乞い師と様子は一緒だ。ところがたった一つ違うのは「雨が降るまで踊り、祈り続けること」だという。Dance until it rains。なるほど、このジョークともつかない言葉が真実をついてる。成功するまで頑張る。それが成功の秘訣だ。

一般社団法人日本在外企業協会「月刊グロ―バル経営」(2013年6月号)より転載・加筆。

 

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