浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第45回】 FRIDAYと月曜日の関係


2012年08月20日

 

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TGI Friday's ロゴ

土曜日の朝、マンハッタン、セントラルパーク。 快晴。

「Oh, what a beautiful morning!」とミュージカル「オクラホマ」の一節が口に出てくる。向こうからきた男性に「カメラのシャッターを押してくれないか?」と気軽に頼む。と、思いがけず「No」の返事がきた。 「This is Saturday」とのことで、一瞬「!?」と考える。

そうか、ユダヤ人(頭にkippa=小さな皿状の帽子=を乗せてるからわかる)には土曜日は安息日。「労働」はしないのだ。(シャッターを押すくらいいいじゃないか)というのはこちらの言い分。(しかも、あなた、歩いてるじゃないか)。しかし、彼はいまシナゴグ(ユダヤ教会)に向かって歩いてるのだから禁止事項には該当しないというわけだ。

ところ変わればマナーも変わる。安息日Sabbatは出エジプト記申命記に記され、十戒の中で守ることを教えられた、彼らにとっては信仰上の重要事項で、仕事、旅行、料理を休む。エレベータのボタンをおすことも「労働」に該当するらしい。大学教育者の長期休暇制度サバティカルSabbaticalの語源だ。欧州企業ではワークバランスのことも考えて、同様の長期休暇制度を取り入れているところもある。

旧約聖書の創世記では「神は6日で世界をつくりあげ、7日目に休息をとった」ので、キリスト教では日曜日。イスラム教ではムハマッドがマッカを脱出した金曜日をジュマJumaと言って、「集まる日」つまり集団礼拝の重要な日として休日にしてる。

Last Saturday (Sunday), I went to Friday. 「週末に金曜日に行った」というのはちょっとした言葉遊び。ここでのFridayとは日本にも進出してるレストラン・チェーン、T.G.I.F. (Thank God, It’s Friday)。「神様ありがとう。今日はやっと金曜日」といっても上記いずれかの宗教的意味合いではない。ここで金曜日が嬉しいというのは花金(花の金曜日)と同義、つまり、「週休2日制」が前提だ。

調べると、ヘンリー・フォードは100年近くも前に週休2日制を導入した。 フォードはそれで作業能率が上がると読み、同時に、人々の余暇が増えることにより「週末は郊外にドライブを」というモータリゼーションの需要を期待したビジネス戦略にほかならない。

もっとも、土曜日(のディスコ)が生きがい、というNYブルックリンのペンキ屋を描いたヒット映画「Saturday Night Fever」が制作されたのは1977年だ。日本でもそのころはまだ「半ドン」の時代。今や死語化してるが、オランダ語の休日を意味する「ドンタクZondag(ドイツ語ではSonntag=日曜日)」が江戸時代に長崎から徐々に広がり、土曜日は半分休みだというのを略して「半ドン」となったという説がある。

そんな日本で1965年、ちょうどモータリゼーションの始まりの時期、松下幸之助翁は景気後退期にもかかわらず、週休2日制を英断した。その意図とは「1日休養、1日教養」のこと。つまり、週末遊びまくって、ぐったりしては「安息」の意味はない。

♪Rainy days and Mondays always get me down.雨の日と月曜日は憂鬱♪(カーペンターズ)、Blue Mondayではいけない。本来は週末に鋭気を養い、月曜日こそ元気はつらつで職場に赴かねばならないのだ。