浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第184回】ノーベル平和賞(日本被団協と九条の会に)考(1)

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Bertha von Suttner



(2017年9月15日JICL法学館憲法研究所に寄稿

いよいよ、10月6日、ノーベル平和賞オスロ(ノールウエイ)にて発表されます。

東京新聞の現地からの報道のごとくのごとく、授賞(選考)対象は「個人か団体」。
ということで、内外多くの知識人の支援(nominator=推薦)を得て、本年も一月に「日本被団協」と「九条の会」を推薦しました(筆者は裏方)。

日本被団協のメンバーの老齢化が進み、そろそろ最後の機会ではないかと危惧しつつ、それゆえにこそ期待感と緊張をもって、朗報を鶴首しております。

又、オスロ(のノーベル委員会)の規定で、推薦(資格)者は、国会議員や大学教授。さらには過去の受賞者です。
ということで、2009年度同賞授賞のオバマ米(前)大統領にも推薦依頼の書簡を出しました。そのこころは、拙稿の通り、オバマ氏自身にとっても「核兵器廃絶」は悲願であるに違いないからです。

さて、添付写真はノーベル平和賞の女性最初の受賞者、Bertha von Suttner(1843−1914。オーストリア人)です。
彼女の著作こそがLay down your arms 「武器を捨てよ」1889原題Die Waffen nieder」であり、拙稿(2014)の主題です。https://hamajimichio.hatenablog.com/entry/2020/10/17/000000

2014年9月、韓国No-Gun-Riにおける 「第8回国際平和博物館会議」にて関係者からもらった宝。きな臭い現在の世相。このバッジを胸に、そこにある「Forward Into Light光に向かって」の通り、10月6日の発表を待っております。

 

【第183回】Lay Down Arms 武器を捨てよ ~ 米大統領就任式での詩

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W/Hより


 

 

 

120日、バイデン第46代POTUS米大統領の就任式。

そこでのアマンダ・ゴーマン嬢の詩:「The Hill We Climb(私たちが登る丘)。

門出を祝う、素晴らしい朗読だった。

https://www.businessinsider.jp/post-228317

 中にあった「We lay down our arms」はベルタ・ズットナー女史の著書「武器を捨てよ(1889原題 Die Waffen nieder)」だ。

ご関心の向きには、拙稿「ノーベル平和賞」2017.9.25までスクロールダウンを。http://jicl.jp/old/voice/index.html

 (ある日本語訳では「我々はお互いに手を差し伸べることができるように『上げた腕を下ろす』」となっているがーー)

 

関連拙稿:

【第123回】いよいよPOTUS戦 〜 赤か青か?

【第114回】Lay Down Your Arms 〜 A・ノーベルの意志

【第182回】1989年私のワイマール ~ 西東詩集管弦楽団

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東京・早稲田で見かけた「西東詩集」カフェー Cafe West East Divan



 

     

(2013年 9月 8日 JANJAN

 

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バレンボイムとサイードの対話

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西東詩集管弦楽団




 

バレンボイムの音楽回顧録

ワイマール!

 何と香(かぐわ)しい名。古典文化の薫り。

音楽が好きで、(チョッピリ)ドイツ語をかじった筆者には、このドイツ(旧東)、テューリンゲン州の小都市、近郊のアイゼナッハ(バッハの生誕地)やイエーナ(大学1558。シラー、ヘーゲルゲーテ、ヘッケル、マルクスなど所縁の地。光学イエーナ・ツアイスの発祥地)を含めて、某年、訪ねた静かな興奮は忘れられない。

そのワイマール(憲法)のことが麻生太郎副総理の口から出た時には、懐かしさが先にたった。

同氏は(日本の)憲法改正に絡めて「ドイツではある日気づいたらワイマール憲法ナチス憲法に変わっていた。誰も気づかないで。あの手口、学んだらどうかね」と言ったというのだ(報道によると)。

場所は「国家基本問題研究所(櫻井よしこ理事長)での討論会でのパネリストとして。同研究所は改憲国防軍の設置などを提言する組織であるとのこと。

この地の名を取ったワイマール文化においては、同時期にドイツ人9人のノーベル賞受賞者を輩出、うち、6人はユダヤ人であった、ということも事実である。

その文化を「退廃的」と判断したヒットラーが粛清に走った。

この地で発効されたドイツ共和国憲法=ワイマール憲法は1919年、第一次世界大戦のあとから成立。後に、1933年にナチが出現し、実質的に消滅した。

が、それは麻生副総理が述べるような「知らない間に(憲法が)変わっていた」ということではなく、全権委任法制定(=立法権を国会から政府に移す。ヒットラー独裁成立)である。

麻生副総理は(巷で言われるほど)無知識ではなく、知ってるからこそこれをもって「狂騒の中でなく」憲法改正をしよう、という発言になっている、と筆者は思う。

「熱狂的にではなく」、というのは筆者も思うところである。

ただ、現安倍政権の憲法改正にはそれこそ「ジワジワ」という感があり、大いに危惧される。

さて、本稿の主題は「西東詩集管弦楽団」である。まさにワイマールにおいて1999年、ゲーテ生誕250年のこの年、EUによって欧州の文化首都に指定されたその年、ダニエル・バレンボイム(アルゼンチ生まれのユダヤ人指揮者、ピアニスト。現在イスラエル国籍)と(故)エドワード・サイードパレスチナ生まれのアメリカ人文学者)が、アラブとイスラエルの若き音楽家たちを集めて、管弦楽団を作った。

それがゲーテの西東詩集になぞらえたThe West-East Divan Orchestraである。

「共に天を仰がず」のアラブとイスラエルの若者100余人が、演奏だけでなく、合宿練習をし、語りあい、いっしょに、郊外にあるWuchenwald(ナチによる強制収容所)にも行っている。

バレンボイムとサイードの対話「Pararerlls and Paradoxes」(監修ジュリアード音楽校長Ara Guzellimian) p7.及び、バレンボイムの自伝「A life in Music」16章「Weimar」はその記述から始まる。

折しも2020年の東京五輪開催が今朝(日本時間)決定した。

その「熱狂」ぶりはわからなくもない。

しかし、解決すべき課題としての放射能汚染がある。

また、世界の一級国たるには、文化。

そこから発する「国際政治力、リーダシップ」を西東詩集管弦楽団の日本公演、それを核とする「パレスチナイスラエル和平対話を日本で」という「平和へのとんでもない事業」の実現に踏み出してほしい。

思えば、1989年秋、ワイマール共和国の首都で、ベルリン・フィルを指揮しながら、ベートーベンのピアノ協奏曲一番を独奏するバレンボイムを正面バルコン(演奏者の背を見ながら)から聴いたのは、壁の崩壊の2週間前だった。

 

関連拙稿:中東和平対話を日本で

中東和平対話を日本で(パレスチナ訪問記) - JanJanBlog

 

熱狂のデモ跡にて

NY・ズコッティ広場、熱狂デモの跡で想う - JanJanBlog



ベルリンの壁崩壊20周年

http://voicejapan2.heteml.jp/janjan/world/0911/0911102955/1.php

アジアユースオーケストラ

平和を奏でるチェロ ~ AYOとともに - JanJanBlog

 

 

【第181回】米大統領 〜 Fat Lady への期待

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fat lady

 

2021年1月1日

 

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Cooper Union

2020 年 11月3日(火)の POTUS 米大統領選挙。

以後、何やら混迷の様子を伝える某紙の見出し はこうだ。

“The game is never over until the fat lady sings.”

太った女性が歌う? 調べると、例えばワーグナーの長編オペラ「指環(Ring) シリーズ」。その最後にソプラノ歌手が20 分間とうとうと歌い、ようやく幕が閉じる。確かに体力勝負だ。「彼女が歌い終わるまでゲームは決着がつかない」とは何とも意味深な表現だ。

今回のPOTUS戦の重要論点のひとつはBlack Lives Matter(BLM)。アフリカ系アメリカ人に対する人種差別抗議運動。そこで、想起するのは A. リンカーン大統領の「奴隷解放」。その大統領候補としての重要な出発点は1860 年2月 27 日の有名な「クーパー・ユニオン演説」だった。

参照:Pin on a little history

場所はNYC マンハッタン、ワシントン広場の近くにある4年制大学クーパー・ユニオン(現存)の講堂Great Hall。同校創立者のクーパー(Peter Cooper、1791−1883)は NYC で生まれたが、学校教育は受けられず、幼い頃から丁稚奉公に。だが、多くの特許を取得し、その収入で事業を起こして大成功を収め、当時の米国で一二を争う富豪になった。そして、「教育は人種や宗教、社会的地位とは関係なく、資格のある者が無料で受けられるべき」と主張した。

私事ながら筆者次女が同校に入学許可され(Art 専攻)、何と4年間の授業料は全額免除(奨学金)だった。米国籍を有しないアジアの子女の才能を認めて無料とする、その寛容さに驚いたものだ。

奴隷制を制限することを繰り返し求めたリンカーンのクーパー・ユニオン演説は圧倒的支持を受け、ここを原点として結果5月18 日、シカゴで開催された共和党全国大会での3回目の投票でリンカーンは候補に選ばれた。そして、いよいよ1860 年 11 月6日(火)の本選挙。リンカーン民主党候補を破り、共和党(別名で GOP:Grand Old Party と呼ばれる)としては初めてとなるアメリカ合衆国第16 代大統領となった。

1861年3月4日の就任式、リンカーンは(南部の市民向けを意識して)大統領就任演説をこう締めくくった。

We are not enemies, but friends. We must not be enemies. Though passion may have strained, it must not break our bonds of affection.(略)”

(私たちは敵同士ではありません、友人です。敵対してはなりません。 たとえ感情が高ぶることがあっても、愛情の絆を断ち切るべきではないのです)

が、何とその後、南部はリンカーンの大統領就任を受け入れず、「南北戦争 American Civil War(1861−1865)」となった。奴隷制存続を主張する南部 11 州は「アメリカ連合国 Confederate States of America」(CSA)を結成して、北部 23 州との間で戦争となった。

何やら暗示的だが、さあ、いよいよ新年1月20 日、大統領就任式。 「体格のよい女神」の世界調和への託宣を期待したい。

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ボストンのリンカーン

ところで、旧臘2020年12月29日。ボストンにあるリンカーン像が撤去された(共同・写真AP)。それはデモ隊や過激派などによる暴力的撤去ではなく、同市議会での決議によるものとのこと。

確かに、このEMANCIPATION(解放)と銘打ったリンカーン立像には半裸の黒人奴隷が跪(ひざまず)いている。

「人間は平等」という精神からすればこれまた暗示的であり、世界レベルで「人権問題」を考えるべき時代になりつつある。

JOEA 「月刊グローバル経営:Global Business English File 85」より転載・加筆

【第180回】Annus HorribilisからAnnus Mirabilisへ

 

2020年12月28日

 

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英英辞典から

2020年、コロナパニックの年だった。

コロナは本当に怖いのか? ~ナイトの「不確実性論」から見る

Annus (年) Horribilis(ひどい)。ラテン語を思いだす。

1992年11月24日、英国エリザベス女王が戴冠40周年で、ギルバートホールで行ったスピーチである。

同年3月、次男が離婚(発表)、4月娘が離婚、6月ダイアナ妃の暴露本が出版。スピーチの4日前、女王の居城ウィンザー城が火事。(スピーチの後、12月には、チャールズ皇太子とダイアナ妃が別居)

2013年もひどい年だった! 同年、「イラク侵略(への追随)の検証」をしないまま自衛隊を派遣した日本政府が、「特別秘密保護法」「日本版NSC」を立法化した。それがまた憲法9条改正に直結すると考え、こころは穏やかでなかった。

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二面の神Janus

さて、January(一月)とは「(今年と来年の)二つを見る」Janus [ジェイナス] = ヤーヌス(古代ローマの神)名である。

【第38回】 二面性のJanuary - 浜地道雄の「異目異耳」

両年(2020 ⇒ 2021)をきちんと見守ろう。

Annus Mirabilis! どうぞ良いお年を!