浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第332回】情報過多の時代~Whistle Blowerの勇断

1984(1Q84)年はアップル社のマッキントッシュ発表に象徴される如く、世界の情報産業に画期的な年であった。

筆者(浜地)個人にとっても、長年の商社勤務から情報ビジネスへの転職に向けてきっかけという忘れられない年である。

【第43回】 「1Q84」年:Appleの挑戦 - 浜地道雄の「異目異耳」

そして、それらの「前触れ」がトフラーの「第三の波」(1980)だ。

インターネットの普及、SNSの発達以降「情報氾濫」の今、課題は多々ある。 そこで、未来学者Alvin Tofflerアルビン・トフラーの「第三の波The Third Wave」(1980)は貴重だ。

第一波がAgricultural Society 2000 BC、

第二波はIndustrial Society I,750 AD、

そして第三波Information Society 1950 AD。

情報化により社会生活が激変するという慧眼である。 中に「情報過多」という指摘もあり、確かに、現下「メディアの役割」が問われつつある。 即ち、社会の公器としての役割である。

その重要な参考を映画「The Post(2017)邦題:ペンタゴン・ペーパーズ 最高機密文書」に見ることができる。

邦題「ペンタゴン・ペーパーズ (NBC ユニバーサル・エンターテインメント)

トランプが米大統領に選出されたと知ったスピルバーグが急遽作成した(2017)と言われてる評判作。

The Postとは即ちWashington Post紙。 1972年、ウオータゲート盗聴事件。ペンタゴン(米国国防総省)内の不正をメディアが糺し、Nickson大統領(当時)を辞任に追い込んだ。 続いてベトナム侵略(1955~1975)の愚を記事公表。 最初にペンタゴンの秘密を報じたNew York Timesは当局から差し止められた。 さあ、その後追いのWashington Postはどうするかが、その女性社主Katharine Meyer Grahamの苦悩だ。 父が創立、あとを継いだのは夫。その夫が自殺。そこで「やむなく」社主となったのが「良き主婦」であった。

映画の圧巻は、シンクタンクRAND研究所にあってそのペンタゴン機密書類の作成に当たったのが元ベトナム従軍兵士Daniel Ellsbergの機密の持ち出し→copyだ。 結局Washington Postは侃々諤々の社内討議の末その機密書類の記事掲載を決断し、その結果、政府当局と裁判で戦いながら勝利する。

立役者Ellsberg氏はwhistle blowerと称され「内部告発者」とされるが、文字通りには警笛吹き。 即ち、新聞は社会の木鐸(Press to lead the public=筆者意訳)なのだ。

whistle(警笛)を blower(鳴らす)とは球技で言えば審判。

企業でいえばaudit監査。その語源はラテン語の「見る」であり、社会の公器たる企業(松下幸之助翁の言葉)ではやはり見張ることが重要だ。 あまり報道されないが、Ellsberg氏はHarvard大出身の経済学博士。その学位論文はRisk, Ambiguity and Decision。即ち保険ビジネスの根幹にあるリスク論である。 本年6月16日、92歳で逝去。

最後の言葉は「楽しかった。みなありがとう」だった由。

筆者には2018年5月マンハッタンでの「(地球終末まで)あと二分」平和シンポでの同氏の熱弁が忘れられない。合掌。

【第113回】真夜中まであと TWO MINUTES 〜 真撃な警告 - 浜地道雄の「異目異耳」

(JOEA 月刊グローバル経営2023年11月号 拙稿第99回より転載・加筆)