浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第113回】真夜中まであと TWO MINUTES 〜 真撃な警告

 

2018年9月1日

 

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「現存で最高の知識人」と称されるChomsky教授の講演

時は本年5月12日。場所はNYCのミッド・マンハッタン。卒業式のシーズンとあって近所のNYUの卒業生が紫色の Cap & Gown姿 (正装) で記念写真を撮っている。米国では卒業式は「Commencement = (次のステップへの) 始まり」と前向きの言葉で表現される。アジア人も多い。20年も前の長男の姿を思い出す。

その近くにあるのが1893年に建設された Judson 記念教会。ふとした縁で、そこで開催された「核兵器廃絶」国際会議に参加した。

朝から夜までの長丁場。題して “TWO MINUTES TO MIDNIGHT”。「真夜中まであと2分」とは、広島・長崎の原爆投下の後、1947年に始まった Bulletin of the Atomic Scientists (原子力科学者会報) による終末時計 Doomsday Clock だ。最初の残り時間は5分。それが今やあと2分となり警告の度を高めている。

会議を主宰する IPB (International Peace Bureau) は1891年設立され、ベルリンに本拠を置く平和団体。1910年ノーベル平和賞受賞。同じく共同主宰者である Rosa Luxemburg Stiftung (ローザ・ルクセンブルグ財団) は、ポーランドで生まれドイツで活躍した有名な女性政治理論家 (1871〜1919) の名を冠する。

そうそうたる登壇者には圧倒される。

例えば、Pugwash Conference。哲学者ラッセルや物理学者アインシュタイン湯川秀樹も参加し1957年7月、カナダのパグウォッシュで開催された第一回 Conference on Science and World Affairs が始まり。1995年ノーベル平和賞受賞。現在の議長で今回のスピーカーを務めた Sergio Duarte氏はブラジル出身で、元国連軍縮担当上級代表。05年の核不拡散条約 (NPT) 再検討会議議長。

CODEPINKはユニークな「女性の平和運動」だ。02年11月、Medea Benjamin女史ら100人が、ブッシュのイラク侵略に反対し、ホワイトハウス前で4ヵ月間座り込みを行った。今や全米各地に100カ所以上の支部、5万人以上のサポーターを擁する。団体名はイラク戦争での警報を色で表したコード (暗号) をもじったもの。

AFSC (American Friends Service Committee:アメリカ·フレンズ奉仕団) は、戦争による犠牲者救済のため1917年に創設されたキリスト教会 (クエーカー)。1947年ノーベル平和賞受賞。良心的兵役拒否で知られる。

映画『The Post (ペンタゴン·ペーパーズ/最高機密文書)』のモデルで、ベトナム戦争の非を暴いた Daniel Ellsberg氏もネット映像で登場。Whistle blower (警告者) の立場から発言した。

日本原水協 (Gensuikyo) の高草木博代表理事のスピーチにも盛大な拍手が湧いた。そして、やはりハイライトは「現存で最高の知識人」(NYT紙)、Noam Chomsky教授。89歳という高齢にも関わらず壇上で45分、張りのある強い論調を展開、250人の聴衆をうならせた。

さて、言語学の大家でもある Chomsky教授。筆者が「地球憲章」という意味で Global Charterとすべきを Grobal Charterとスペルを間違えた名刺を差し出し、それを謝ったところ、“No problem. It's often the case"「よくあること」。ネイティブでも l と r を間違えることがあると。これには大いに励まされた。

 

参照:

【第59回】 チョムスキー教授来日講演 〜 世界平和への共鳴 - 浜地道雄の「異目異耳」

【第60回】 「憲法九条にノーベル平和賞を」に賛同してくれたチョムスキー教授 - 浜地道雄の「異目異耳」

 

JOEA 「月刊グローバル経営:Global Business English File 73」より転載・加筆