浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第331回】中東紛争に想う~「武士道」を世界平和希求に

 

ロシア・ウクライナ紛争(宗教紛争)に続くパレスチナ(ガザ、ハマス)・イスラエル紛争。

一神教イスラム教、ユダヤ教キリスト教)の世界での2,000年来の複雑な異文化、宗教、治政。

ビジネスマンとして長く中東駐在、出張を通じて「紛争」を目の当たりにしてきた筆者は「オスロ合意(1993)」の通り、「共存しかない」と強く主張してきた。(承前)

【第330回】パレスチナ・イスラエル紛争に日本は平和仲介を! - 浜地道雄の「異目異耳」

日本(人)には理解が難しい中東事情。 ここでは中東研究専門家の声明は傾聴に値いする。

 

さて、その事情を踏まえつつ、筆者(浜地)は、この11月3日文化の日岩手県盛岡市を訪ねた。目的は「盛岡先人記念館」にある新渡戸稲造記念室。

新渡戸稲造- 盛岡市先人記念館

(左) 紅葉の美しい先人記念館 (右)新渡戸稲造胸像

広い展示室には新渡戸の多くの貴重な記録が展示され、その「太平洋にかける橋」というグローバル意識、意欲、行動力に改めて感動させられた。

新渡戸は札幌農学校(クラーク博士)でキリスト教を知り、その後渡米、クエーカ教徒のメリーMary  Patterson Elkintonと結婚し、クエーカー教徒となった。

西欧文明と日本の伝統的な価値との融和と確執。それはその後も常に悩み、苦悶した課題であった。

ドイツ留学時、ベルギーの法学者エミール・ド・ラブレーから「宗教教育がない日本では、どのように道徳教育を授けているのか?」と問いかけられたことがきっかけで日露戦争前夜の1900年「武士道Bushido: The Soul of Japan」を著した。(原文英語:翻訳、日本語、独語、仏語、他多数――)

日本独自の複数の信仰や思想が武士道精神の形成に影響を与えたとして、仏教・神道儒教の教えに言及。核は「7つの徳」: 義、勇、仁、礼、誠、名誉、忠義

(尚、明治期にあって、武士=男性中心のみならず、第14章においては「女性の力」も記述している)

 

記念館新渡戸記念室では、特に、かねてよりその存在を聞いてきた「武士道のアラビア語版」に目を奪われる。

◆◇◆ 日本・アラブ通信 ◆◇◆

(左)「武士道」アラビア語版 (右)武士道 日本の魂(1900)

 

現下の中東紛争にわが日本ができる唯一のことは「九条を軸にした平和仲介」。

そこで強く思う。「武士道アラビア語版」はじめ、各国語復刻版を世界に拡散し、世界平和における日本の立場を訴える強力手段とできないものか、と。

 

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