浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第250回】OSINT時代に想う「情報」と「知力」= Intelligence

 

  

f:id:TBE03660:20220405185313j:plain

 OSINT Guide : Nicholas Crowder (著)

 

四月。April foolの起源にはペルシャやインドの風習などいくつかの説があるがユーモアがベースだった。

現在、それはビジネス(広報宣伝)にも使われることがある。昨2021年、米国Volkswagen社はVoltswagenへの社名変更、即ち、「電気(Volt)自動車Wagen」の先取りとして発表した。が、株価に「不当な影響」が出たことで、「April Foolだった」と同社は即刻謝罪撤回した。 

このような事態にあって重要性が強調されているのがfact checkだ。

 国際ファクトチェックネットワークInternational Fact-Checking Network、IFCNが毎年4月2日をFact-Checking Dayと決めたのもこのApril foolの翌日に事実検証をするというのが根拠であろう。

 IFCNには世界の60以上のメディア・団体が加盟しており、その基準は公開された情報の真実性・正確性を検証しその結果を発表する。その要件としてCode of Principles綱領5点を挙げている:  Nonpartisanship and Fairness非党派・公平/ Transparency of Sources情報源の透明/ Transparency of Funding and Organization財源・組織の透明/ Transparency of Methodology方法論の透明性/Open and Honest Corrections明確で誠実な訂正。

インターネットの出現により、SNSの発展から「意図的誤報」、fake news、cyber-terrorismが出現。現下、2つの情報大混乱が世界を揺るがしている:「新型コロナ・パニック」と「ロシアのウクライナ侵攻」。

前者にあってはEBPM Evidence-Based Policy Makingが欠如し(=F.ナイトの不確実性論)、「命か経済か」という二者択一論でメディアが「感染、感染」と連呼している。【第247回】新型コロナ ~ 「分科会」経済学者の優れた異見 - 浜地道雄の「異目異耳」

後者にあっても同様、歴史・地政評価の欠如がある。基本的に宗教戦争(西欧キリスト教vsロシア正教)の色濃く、これは我々日本人には分かりにくい。

又、侵攻の2月24日、プーチン大統領が演説でNATO(=軍事同盟)を非難した際例示した「米英による2003年イラク侵攻」。その根拠は米国パウウエル国務長官が国連で演説をした「大量破壊兵器」だが、後年のfact checkにより「カーブボール」即ち亡命イラク人によるねつ造であったことが判明している。【第248回】「情報氾濫時代」~最重要なFACT CHECK(情報真偽チェック) - 浜地道雄の「異目異耳」

 ありとあらゆる情報が世界中を駆け巡る中、公開情報をfact checkにより分析・検証するその重要手段が、注目を集めてるオシントOSINT=Open Source Intelligenceだ。 

もともとサイバーセキュリティの業界用語であり、国家安全保障に関して戦略情報を収集する軍事・諜報活動Intelligenceである。ビジネス面では、Webサイト、ソーシャルメディア、デジタルサービスの登場によって、企業のITインフラや従業員に関して、OSINTを介し膨大な情報を収集、分析できるようになった。そして、その根にあるのは人間のintelligence知力だ。 

30年の歴史を持つBIS Business Intelligence Societyの中川十郎会長の経験では、competitive intelligence競争情報には相手の内部情報を盗みだすという意味合いも含まれる。が、BIでは公開情報Open Sourceに基づき、ビジネス展開に向けて、戦略策定のための情報を収集、分析、精査をするものだ。 

軍医としての森鴎外が1901年、クラウゼヴィッツの「戦争論」から引いて翻訳した「情報」はintelligenceだが、「情けに報いる」と読めば「信頼すべき人間関係」と意訳できる。 

(一社)在外企業協会「月刊グローバル経営」2022年4月号より転載、加筆

 

関連拙稿:

【第28回】 鴎外に学ぶInformation - 浜地道雄の「異目異耳」

 関連URL 

FIJとは | FIJ|ファクトチェック・イニシアティブ