浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第13回】 ローマのRelations


2009年09月28日

  

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Vespa(スクータ)で女の子と二人乗りでスイスイ走る。
この憧れの風景は云わずと知れた映画「ローマの休日」、恰好の「生きた英語」の教材だ。

グレゴリー・ペックが扮するアメリカの新聞記者Joe Bradleyは標準のアメリカ英語で話し、オードリー・ヘップバーンが扮する某欧州国のAnn王女はブリティッシュ系の優雅な英語を話す。

各国表敬訪問中、形式行事が続き、とうとうAnnは最後の滞在地ローマでそっと宿舎を抜け出す。直前にうたれた鎮痛剤のせいで道のベンチでウトウトして、そこを通りかかったJoeに介抱される。

いきいきとするAnnは望みだった美容院で髪を短くして、スペイン広場でジェラートを食べ、Vespaで二人乗り、「真実の口Bocco della Verita」を訪れーー、二人の距離が次第に近づいていくのは、何度見てもドキドキする。その間、Rocca'sというカフェのテラス席で、40年も続けてるというAnnの父親の職業(=王様)をJoeが尋ねる。

Joe: What does he do?

その答えがなんと「パブリック・リレーションズ」である。

Ann: Well..mostly you might call it.. public relations.

その当意即妙ぶりには感心させられる。
PRと略記されるPublic Relationsは今やビジネスの重要な戦略である。

ものの本によると、1802年第三代アメリカ大統領トーマス・ジェファーソンが、議会教書の中で使い注目される用語とのことで、アメリカ生まれのこの概念は時には世界情勢をも動かすほどに重要性を増してきた。
ただ、日本ではメディアに広告はAdvertisement。そこからPA Public Affairs、Public Interest(公益)と観点を広げ、広報つまりPublic Relationsとなる。

PRSA〈米国PR協会〉ではこう定義している。「パブリックリレーションズは、各種団体、機関の相互理解の貢献することによって多元的社会が意思決定を行い、より効果的に機能することに貢献するものである」

働きかけてタダでやる広告、プロモーション、プロパガンダと思われて、広告と混同されるなどやや誤用されてる感もあり、整理が必要だ。

元々ローマ・カトリックの普及用語だったPropagandaはナチス宣伝に使われて価値を低めたし、全体主義社会主義の国ではスポーツ大会などでの国威発揚に使われる。

何であれこの人間社会で重要なのはRelation=関係。普通に「関連」という時は単数だが、「双方の関係」といった場合はRelationsと複数扱いになる。

株式上場の場合は投資家相手にインベスター・リレーションズ(IR)、コミュニティとの関わりはコミュニティ・リレーションズ、政府への規制緩和等の働きかけはガバメント・リレーションズ。

コンピュータ用語にもRDBMS (Relational Data-Base Management System),CRM (Customer Relation Management)がある。

Task-Orientedな国際パートナーには「日本はRelationship-Oriented SocietyでありHuman Relationsがだいじ」と説明するのがよい。

王女としての最後の謁見でのAnnのことばは、I have faith in relations between people. もう会えない二人の関係。つらく、せつないーー。

(社)日本在外企業協会 「グローバル経営」より転載・加筆

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