浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第121回】オマーンに思う「キチンとした英語」

 

2020年4月1日

 

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ブサイナ王女会見記を含む「アラビアの王様と王妃たち」

本年はじめ1月11〜15日、安倍晋三首相夫妻は日本の石油輸入の9割を占める中東での「友好仲介」を調って、サウジアラビアUAEオマーンを訪問した。オマーンは日本人にはあまりなじみのない国だが、親日国である。同国には母親が日本人であるブサイナ王女 (Buthaina bint Taimur Al-Said、1937年生、日本名 節子) がおり、ロマン心をそそられる。カブース国王の祖父・タイムール元国王が神戸で見初めた大山清子との娘だ。「アラビアの王様と王妃たち」(下村満子朝日新聞社)の面談記に詳しい。(アラビアでは女性の世界に男は入れない) 

カブース国王は正式にはSultan Qaboos bin Al-Said (1940年11月8日生)。Sultan (スルタン) とはイスラム教国の君主であり、Sultanate of Oman というとその君主の地位ないし領土を指す。カブース国王が就任したのは1970年。元首としての在位期間は近代アラプ世界で最長となる。穏健ながらも積極的な外交政策を推進し、サウジアラビア主導の湾岸協力理事会 (GCC) の構成国でありながら、2015年イラン核合意の成立にも貢献した。

本年1月10日、同国王死去のニュースが現地の友人から入ってきた。79歳。安倍首相の訪問直前。それを知り「やっぱり」という複雑な思いがあった。というのも、実はカブース国王は長く病床にあり、すなわち、最初から安倍首相とのトップ会談はあり得なかったのだ。

外務省によれば、同国王の死去に伴って急きょ即位したハイサム・ビン・タリク新国王 (Haytham bin Tāriq Al-Said) と安倍首相は、中東地域の安定のために協力を合意した、とのこと。

さて、筆者が石油担当商社マンとして中東に駐在や出張をしていた当時、強く思ったのは「きちんとした英語」を話すことである。例えばカブース前国王はイギリスに留学、20歳の時には英王立陸軍士官学校に入学し、卒業後は英軍連隊に配属され1年間西ドイツに赴任、という国際派である。また、ハイサム新国王は1979年オックスフォード大学卒業。政府高官は皆イギリス(またはアメリカ)の留学経験者、および雇われ外国人。ビジネスの世界では、湾岸一帯の諸国は英語圏なのだという思いを強くした。

まるで未知の同国を最初に訪れた時のこと。首都マスカットの一級ホテルは今思えばモーテルのようなプレハブだった。迎えに来てくれた政府 (石油省) の担当役人はイギリス人。そこでは「キチンとした英語」が主役であった。ビジネスで求められるのは「ペラペラ英語」でもなければ、よくありがちな「ため口英語」でもない。中身のある会話なのだということを実感した。 

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オマーンから送られてきた友人(右)とそのビジネスパートナーの写真

そこで身近な驚きとしては、前述のオマーンの友人。去年まで東京の英語教育ビジネスでの同僚だが、王族とのことだった。現在、同氏は世界最大の英語学校 EF のパートナーであると聞く。彼から送られてきた美しい写真。また訪ねて英語教育論を語り合いたい。

JOEA 「月刊グローバル経営:Global Business English File 81」より転載・加筆