浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第189回】ノーベル平和賞(日本被団協と九条の会に)考(6)

 

(2018.5.21JICL法学館憲法研究所に寄稿

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チョムスキー教授の講演



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事後の懇話会でイスラム教徒の若者と

 

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サリバン女史と、同校担当教師

 

「世界の良心」、チョムスキー教授に再会 @NYC

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サリバン女史の授業風景

国会をはじめ、世はモリカケ問題、セクハラ問題で賑っています。

が、目を世界に向けると「南北朝鮮問題」「イラン核合意破棄」 「米大使館エルサレム移転」と、地球規模の大問題が発生しています。

 

ここで、どうしても看過できないのが、「世界平和」とは真反対のアベサンの「地球儀俯瞰外交」。(本欄、拙稿、2018年3月5日)

そこに記したごとく、世界唯一の被爆国でありながら、「核兵器廃絶」へのアベ政権の消極姿勢は如何なることか?  

・国連核兵器禁止条約TPNW Treaty on the Prohibition of Nuclear Weaponsに署名をしない。  

ノーベル平和賞2017受賞に祝辞も送らず、来日フィンICAN事務局長の面談要請を断るーー。

 

結論を先に言えば、「個人的信頼関係にあり」「100%信じている」米トランプ大統領への「忖度」ということでしょう。

 

そんな、いてもたってもいられない気持ちの折、New York City で、怒涛のような4日間(5月11日―14日)を過ごしてきました。

9条を軸とする「教育(異文化理解)」と「(世界)平和」という点で、二人の要人に再会できました。(中満泉UN軍縮担当次長には面談ならず)

1)ハイライトは何といってもIPB(1910年にノーベル平和賞を受賞した国際平和ビューロー)主催の国際会議「TWO MINUTES TO MIDNIGHT」。即ち、終末時計による「もう後2分」という地球危機。   

於:Judson Memorial 教会 (ワシントン広場)

PDF

12日、土曜日、朝10時から夕刻16時までびっしり。250人。 話題の「ペンタゴン機密文書(ベトナム戦争の愚)」を暴露したDaniel Ellsberg氏も参加(ネット中継)。

中で、N・チョムスキー教授が45分の講演。The Fate of Humanity。 まさに人類の運命、もう二分しか残されてないのか?

日本のメディアでは共同通信赤旗が取材をしていたが、ここでは南北朝鮮問題にも言及しています。

【南北首脳会談】「米は朝鮮半島問題に干渉するな、という趣旨だ」 「板門店宣言」を米の有名言語学者が読み取る - 産経ニュース

非核平和を選択 原水協・高草木氏が強調/紛争から核廃絶へ/米で国際会議

 

90才という歳を超越した、張りのある声、主張、思想、世界平和論。 トランプ政治への批判。

 

そして、事後、どうしたことか懇親会にも誘われ、そこで、チョムスキー教授に直接、筆者の最大の関心事「世界の宝憲法九条」ついて質問。

「非常に重要」とし、アベ政権による改憲の動向も認知しており、まさに「トランプに追従などとはとんでもないこと」との 即答が返ってきました。 思えば2014年1月、来日時に「憲法9条ノーベル平和賞を」運動を励ましてくれた姿勢と寸分も変わっていない。  

【第60回】 「憲法九条にノーベル平和賞を」に賛同してくれたチョムスキー教授 - 浜地道雄の「異目異耳」

尚、チョムスキー教授が胸にしてるのは、昨年受賞のショーン・マクブライド平和賞のメダルです。

https://www.tokyo-np.co.jp/article/national/list/201711/CK2017112502000242.html

 

2)ICAN(2017ノーベル平和賞)の一員であるHibakusha-Stories   

http://hibakushastories.org/youth-arts-new-york-board-of-directors/

核兵器の悲惨さを若き世代に伝えんと、NY地区を中心に学校訪問し、高校生に「語り部」を務めている。

 

5月14日、月曜日、マンハッタン50丁目のWest Endにある高校での授業を視察。

校内には主としてスペイン語が中心の掲示ばかり。ということは中南米出身でしょう。

が、授業は英語で、核融合の仕組み、爆発の仕組みの解説が始まり、 ウラン、プルトニウムと専門用語が続きますーー(汗)。

 

そして私もひとこと。「戦争放棄を宣言した憲法九条」の紹介――。 皆「知らなかったー」とのコメント。

 

さて、この草の根運動を通じて、未来の世代が広島・長崎(の悲劇)を知り、大いに世界平和の旗手になっていくのを楽しみに――。

【第188回】ノーベル平和賞(日本被団協と九条の会に)考(5)

 

 

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ECUMENICAL CENTREの入居者リスト



 

 

(2018.3.5JICL法学館憲法研究所に寄稿)

 

   

「世界平和」とは真反対の「地球儀俯瞰外交」

 

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ジュネーブにあるICANの入る ECUMENICAL CENTRE





ノーベル平和賞2017がICANに授賞され、裏方(「日本被団協」)の筆者としてはまことにうれしいこと。
そのICANの本部事務所(ジュネーブ)を訪ねた「九条・地球憲章の会」の堀尾輝久代表(東京大学名誉教授)から写真が送られてきました(2月7日)。

私は「(日本的に)雑居ビル」の一室と思っていました。
が、ノーベル平和賞2018に「九条の会」を推薦nominateして下さった野元晋教授(慶応義塾大学、中東思想史)から、「Ecumenical(宗派を超えての)世界教会主義」という非常に重要なご指摘があったので、要約下記、ご披露します。

痛感するのは、グローバル化が叫ばれる日本にあって、現下の日本政府の「地球儀俯瞰外交」に致命的に欠けている「異文化(宗教)」理解、という視点。
安倍晋三首相が「100%信頼する」というトランプ米大統領の危うい言動。
就中、駐イスラエルアメリカ大使館のエルサレム移転政策は、この「Ecumenismエキュメニズム」とは真反対で、世界平和を脅かす危険なものです。

参照:

WCRP JAPAN 公益財団法人 世界宗教者平和会議日本委員会 Religions for Peace

さて、このビルの看板で見るとキリスト教教会関係は"Ecumenical Organizations"と一括りになり、同じビルに"World Council of Churches"(世界教会協議会)とか、"Lutheran World Federation" (ルター派世界連盟)とか錚々たる国際的キリスト教機関が入っていることが記されています。

その中に"Ecumenical Patriarchate Representation"というのもあります。これは「世界総主座代表部」の意味で、現コンスタンティノープルイスタンブル)総主教座が持つ代表部です。これは勿論、かつて東ローマ帝国、もしくはビザンツ帝国の首都であったコンスタンティノポリスの総主教座で、1453年の同都陥落とその後のオスマン帝国支配を生き抜き、そしてトルコ共和国の管理下に存続し、東方正教会の世界的名誉首座の地位にある総主教座が持つ代表部です。
"Ecumenical"の語源であるギリシア語"Oikoumen?"は「人が住む地域」というほどの意味を持つ言葉ですが、アリストテレスの用例にもあるように、後にギリシア人、非ギリシア人に関わらず、「人が居住する世界」の意味を持ち、人が住む世界全体を指すようになりました。

なお"Oikoumen?"の構成要素の語"oikos"は「家」とか「人が住む場所」全般を意味し、これが"oikonomia"となりますと、"nomos"(「使用」、「慣習」、「法」、「規則」)の意味が加わり、「家族の管理」となり、転じて「管理」、「行政」、「アレンジメント」の意味も出てくるようです。この"oikonomia"は"economy"(節約、倹約、経済)の語源であると思います。

 

 

参照:Ikonomi氏とEconomy

https://hamajimichio.hatenablog.com/entry/2020/10/06/000000_1

【第187回】ノーベル平和賞(日本被団協と九条の会に)考(4)

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1月16日、ICANのフィン事務局長と



 

 

(2018.01.22JICL法学館憲法研究所に寄稿)

ノーベル平和賞2018への挑戦 ~ 「九条の会」を

ノーベル平和賞2017が「ICAN核兵器廃絶・PB/日本被団協」に授賞され、2014年来、裏方ながら推進してきた私はこれをもって「一段落」、と考えておりました。

ところが、本年初、現地オスロの平和研究スジから「とんでもない。『憲法九条』と『核兵器廃絶』は世界平和に向けての車の両輪。この運動を継続し、世界的に展開すべし」と檄が飛んできて、あわてて内外各地と連絡、態勢を整備。

結果、堀尾輝久「九条・世界憲章の会」代表ら「有資格者」に「九条の会」の推薦nominationを提出して頂きました=再挑戦(締切1月31日、オスロ)。

そんな折、「ICANフィン事務局長」が来日。
1月16日、国会での討議を終え、代々木のオリンピックセンターでの講演会の直前、短いながらも有意義な面談の機会があり、このこと=ノーベル平和賞2018に再挑戦=を報告し、今後の「協働」「支援」をお願いしました。 
(撮影:ピースボート東京Meri Joyce女史)

ノーベル平和賞日本被団協九条の会」については下記の通り。
2016
2015

尚、このあたりの様子については、「ノーベル賞の舞台裏」(共同通信ロンドン支局取材班。ちくま新書)に、実名を含めて詳しいのでご参照。
(第三章「平和賞」:p117~)

【第186回】ノーベル平和賞(日本被団協と九条の会に)考(3)

  

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「アフガンの少女」(ナショナル ジェオグラフィック)

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Malala嬢・ノーベル博物館(EF Education First)


(2017.12.18JICL法学館憲法研究所に寄稿)

ノーベル平和賞2017を喜び、今後を考える

(承前)ICANノーベル平和賞2017を授賞(2017/10/16)

 12月10日、A.ノーベルの誕生日、ノールウエイの首都オスロの市庁舎での授賞式、非核兵器についての授賞スピーチが大きく称賛、報道されました。

 2014年来、裏方として追ってきた者(「日本被団協」と「九条の会」に)として、感無量です。

 と、同時に裏方であるがゆえに、強調しておきたいのはICAN日本被団協をNominate(推薦)してきた内外の知識人*。
一例:

The Nobel Peace Prize Watch


・Ole Petter Ottersen 教授、 Oslo 大学学長
・Dr. Hellen Barsosio、ケニア。1985年同賞授賞のIPPNW理事。
(International Physicians for the prevention of Nuclear Weapons 核戦争防止国際医師会)

中国の故事にならえば、「飲水思源(いんすいしげん)」:水を飲む際には、井戸を掘った人の苦労を思う。

オスロのノーベル委員会の規約:・推薦(nomination)資格者は国会議員、大学教授、過去の受賞者、等(不特定多数の署名は不可)。
・対象は「個人」か「団体」(「9条」は不可)。
・自推は禁止。
・受賞対象は3人または3団体まで。

そして今後の課題
1)唯一の被爆国として、日本(政府)が核兵器廃絶にどのようにリーダーシップをとって行くか。「核の傘」が有効なのか? 米トランプ大統領に追従するのが妥当なのか?
 因みに、同大統領の「イスラエルの首都をエルサレムに」宣言は、中東(聖書時代以来の紛争)を知るものには「恐るべき所作」と映ります。=中東紛争→IS過激派のテロ誘発。
 即ち、イスラム(過激派)の絶対生活訓「聖クルーアン」の教えは「徹底抗戦=最後の一人まで戦う」です。

2章牝牛186節:「汝らに戦いを挑む者があれば、アラーの道のために堂々とこれを迎え撃て」
2章牝牛188節:「しかしむこうが(戦いを)止めたら汝らも手を引け」

 この政治心理はイスラム圏ならずとも、或いは、北朝鮮ならずとも、世界の戦争・紛争の歴史が示すところです。いえ、我々の日常生活とも軌を一にするところです。

2)「世界の宝九条」を守る「九条の会」(全国で7,000)の運動を、どう世界に広げていくか。

 今回、ノーベル平和賞に「日本被団協」を推した米欧知識人が「九条の会」を推さなかった主な理由として、その発起人9人の多くが他界した今、その活動が「英語・外国語によって」世界に知らされてないこと、を挙げました。先般、事務局長の小森陽一教授(尊敬すべき「夏目漱石」研究家。漱石は日清・日露戦争の観察をベースに非戦思想の小説を朝日新聞に掲載した)にはご説明・ご提案を申し上げました。

 振り返れば、2014年1月2日付けの東京新聞記事「憲法九条にノーベル平和賞を」に触発されての運動。「武力で平和は不可能」⇒「憲法九条は世界の宝」という主張する、 私は驚いた次第です。素晴らしい!と。
 その原点は、商社マンとして中東経験、情報産業に転職後のNY移住。
 そこで遭遇した10指に及ぶ「テロ・紛争」遭遇。
「異文化(宗教)」の衝突」の体感です。

 そして、これ(ノーベル平和賞2017・ICAN受賞)にて、一段落といたします。

 

 

【第185回】ノーベル平和賞(日本被団協と九条の会に)考(2)

 

(2017.10.16 JICL法学館憲法研究所に寄稿)

 

 

 

 


授賞発表

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喜びを語る東ちづるさん

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発表を喜ぶ三宅信夫さん(前列右)ら






ICANノーベル平和賞2017を授賞

(承前) ノーベル平和賞(日本被団協と九条の会に)考

さて、いよいよ発表日、10月6日、ピース・ボート(東京・早稲田)でのパブリック・ビューイング。

日本時間の午後6時(ノールウエイ時間午前11時)、用意されたスクリーンにBerit Reiss-Andersen委員長の姿が写し出され、「ICAN 」と発表しました。

その瞬間に70人ほどの参加者は一斉に「すごい!やったー!ブラボー!」と叫び、お互いに抱き合いました。

添付はパネルに登壇した「日本被団協」の三宅信夫さん(88)らヒバクシャ(被爆者)と、女優の東ちづるさんが涙とともに喜ぶ姿です。
三宅信夫さんは16歳の時に広島で被爆東ちづるさんは広島県出身で、ピース・ボートに乗船経験もある平和活動家。

ボードにはICANのペナント。取材陣も取り囲み、フラッシュが光ります。

ICAN:International Campaign to Abolish Nuclear Weaponはスイス・ジュネーブに本拠をおく、国際NGO核兵器廃絶国際キャンペーン。100ヶ国以上に亘る450以上の団体のネットワークで、日本からはピース・ボートはじめ7団体が参画。

ピース・ボートは2008年より「ヒバクシャ地球一周、証言の航海」を通して被爆者とともに平和活動をしてきたもの。

ICAN/ピース・ボートと連携運動をしてきた「日本被団協」の代表田中煕巳さん(85)の言葉のとおり「これから先につながる」授賞。
http://www.iza.ne.jp/kiji/life/news/171006/lif17100623010030-n1.html

「これから先」、即ち、「世界の宝憲法九条の理念」を地球憲章に拡大すること。
これが私(たち)の主張です。

早速、本2017年度も「日本被団協」を推薦(nomination)してくれた内外の知識人に喜びの報告と、お礼を伝えました。
http://www.nobelwill.org/?tab=8#hidankyo2

M.セルデン(コーネル大)、A.ダッデン(コネティカット大)、P.ヴァン・ドウンゲン(ブラドフォード大)、P.カズニック(アメリカン大)、久山宗彦(カイロ大学)、諸教授。

日本では、主として中東研究家。塩尻和子(東京国際大)、長澤栄治(東京大)、野元晋(慶応義塾大)、板垣雄三(東京大)、諸教授。
中東で「紛争・テロ」を目の当たりしてきた方々(私も含め)は「武力で平和は不可能」と熟知してます。日本の国会議員ではただ一人(私の知る限り)、小西洋之氏(参)。

N.チョムスキー教授(MIT)の励ましも忘れられません。https://hamajimichio.hatenablog.com/entry/2020/08/29/000000