浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第320回】AIを駆使・管理するのはHI=人間の知力

昨今、疾風のごとく登場、活発な「生成AI」論議。だがそれは一過性のものではなく、その根には、「情報」「通信」という長い歴史があり、はたまた、グローバル社会にあって将来を見据えての「管理」という深い命題である。「偽情報の混入」「(個人・企業)情報の漏洩」と並び、ビジネス上深刻な著作権copy right問題がある。

ものの本(と言っても今や多くは紙ではなくネットで「ググる」わけだが)によると、産業革命に寄与したグーテンベルグのprint技術の発明は1439年。そして現在事務機として使われるcopy複写機蒸気機関の発明者スコットランドのジェームス・ワットによって1779年に発明された。

このprintとcopyに「送信技術」を加味したファックスミリfacsimile が近年発達してきた。その「脅威/驚異」をテヘラン駐在商社マンだった筆者は1973年、50年前、石油危機にあって実感した。トイレットペーパ騒ぎだ。

同年発生の第四次中東戦争にあってNIOCイラン石油公社との石油価格交渉の場。その前年締結した長期DD(Direct Deal=メジャーを通さない直接)原油契約の改定交渉だ。その場にあって、相手から見せられたのはトイレットペーパを求めて大阪スーパーマーケットに殺到する群衆の姿。交渉結果、OPECの公示価格はそれまでの約4倍の11.65ドル/bblに高騰した。痛恨の思い出である。

【第199回】JANJAN過去記事から(1)トイレット・ペーパ騒 - 浜地道雄の「異目異耳」

手紙、電話、電報、テレックスが通信手段であった当時、突然のファックスミリの登場は「ショック」だった。

後年調べると、1972年公衆電気通信法の改正により電話網が解放され、NTT日本電電公社(当時)が公衆電話網を用いたファックスミリの利用を可能にしたタイミングであった。

facsimile。その語源はラテン語のfacere(作るmake)+ similar(同形の物を再生する)であり,略してfax。英英辞典で見るとan exact reproduction or copyとあり、又、シソーラス辞書ではduplicate, reproduction, likeliness , copyとやはりcopyという言葉に繋がる。

そこで想起するのは「コピペ」copy and paste現象。

2010年(10月)、ある文芸誌が中学三年少女の作品を新人賞に選び、話題になった。少女は同様投稿し20ほど入選したとのことで、その才能に新時代を感じさせた。

ところが、これらはインターネットで「コピペ」をした作品ということがわかり、いわゆる盗作として保護者が主催団体に辞退を申し入れたという「事件」だ。

 

[コピペ要注意]

 

さあ、しかし、10余年後の今、世情を見るに「コピペ」は当たり前の行為になっているのではないか。話題の生成AI(chatGPT)とは即ち「コピペの大規模化」であるという注目すべき論考もある。

そこでその「コピペ作品」から盗作を見破るにはどうしたらよいか。やはり人間の知力であるということに尽きる。即ち、AIを管理するのはHI=Human人間のIntelligence知能である。がその前に、intelligenceには例えばCIA Central Intelligence Agencyのごとく「諜報」という意味もある。従い、HIとはつまり人間の(知能ではなく)知力intellectである。確かに知的財産はintellectual property IPと訳される。

「生成AI」というツールを駆使し、財産を守り、ビジネス展開をするのは人間なのだ。

 

(一社)在外企業協会「月刊グローバル経営」9月号拙稿「Global Business English File第98回」から転載、加筆。

 

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