浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第317回】 必読、「ウクライナ・コロナワクチン報道にみるメディア危機」

コロナ禍はパンデミックpandemic世界的伝染病流行ではなく、WHO世界保健機構が警告する通り、インフォデミックinfodemicである(information情報とepidemic伝染病の造語)。つまり「殺人伝染病」ではなく、誤った情報を茶の間に送り込むワイドショーはじめSNSを含むメディアに煽られる人びとのパニック姿だ!

コロナ・パニックが発生して3年余。ワクチン禍が加わった社会の大混乱(経済、ビジネス、教育)をどう終焉させるのか?

【第316回】 コロナ前の暮らしを取り戻そう!市民の会 ~コロナ(ワクチン)・パニックを総括(予定) - 浜地道雄の「異目異耳」

メディアには「F.ナイトの不確実性論」(証左の無い推測は「オバケがいつ出るか」という恐怖を煽る)は報道・解説されない。

そして、世相の混乱ははたまた「ロシア・ウクライナ紛争」。日本のメディアの報道・解説にはしかし「宗教問題」は殆どない。この根にはキリスト教(同根であるイスラム教も、ユダヤ教も)が本来禁止している「同性愛、同性婚」をめぐる基本項がある。

松本道弘氏とConstantinopleで語りあった「言葉と文化(宗教)」~ロシア・ウクライナ紛争に想う | ISF独立言論フォーラム

 

そんな折、「ウクライナ・コロナワクチン報道にみるメディア危機」(嶋崎史崇、本の泉社)を知り、驚嘆した。まさに、筆者(浜地)がこの数年、悶々としてきたテーマそのものであり、その細緻な論考に青線・赤線を引きながら熟読した。

必読の書

ウクライナ・ コロナワクチン報道にみるメディア危機 嶋崎 史崇(著/文) - 本の泉社 | 版元ドットコム

聞けば、本書は著者嶋崎史崇氏にとって、初めての著書とのこと。膨大な参照表とともにその「精緻さ」がゆえに、(難解ではないが)通読には時間がかかる。

が、それゆえにこそ、あたかも百科事典の如く大混乱の世情の理解に役立つ。

通巻してのキーワードは「半ポスト真実」。ポスト真実」とは2016年「オックスフォード英語辞典」に初めて登場した言葉で、「客観的事実が、世論形成に対して、感情や信念への訴えと比べると影響力を持たなくなった事態である(序章より)。

そして、「半」とは(ご本人の説明によれば)半面のこと。「専門家・有識者、当事者の間で複数の意見が対立しているにもかかわらず、半面の意見のみをメディアが伝え続けることで、現実から懸け離れた言論状況が出現する状態」。なるほど。この視点をカギに全編熟読すると理解が深まる。 

本書を通読して強く思うのは、本書が単なるジャーナル(時評)ではなく、膨大な「注」をもとにした「学術書」でもあり、混乱の世情にあってファクトチェック(=一体真実は何なのだ?)を促す警告書である。

筆者(浜地)の「コロナ禍」「ロシア・ウクライナ紛争」についての危惧と見事に一致する。【第262回】 (「コロナ」と)「ウクライナ/NATO」を検証Fact Checkする - 浜地道雄の「異目異耳」 (昨2022年7月5日、記)

そして、またまた驚くのは著者はこの最初の著作発刊にあたり、著作料は放棄しているとのこと。

あっぱれな心意気、使命感だ。