浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第2回】バーンスタインを巡るRight

 

2008年11月01日

 

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バーンスタインのハーバード講義

この秋から年末にかけて(12月13日まで)、マンハッタンはバーンスタイン一色だ。Leonard Bernstein、偉大な音楽家の生誕90周年、ニューヨーク・フィル音楽監督就任50周年を記念して、カーネギーホールとNYフィルによる様々な公演がなされる。その名(Stein)が示すごとく(ウクライナ系)ユダヤ人移民の三世として、マサチュセッツ州に生まれた。父親は理髪店を経営、家族には音楽的環境はなかったというから、才能はどこに潜んでるかわからない。ハーバード大で哲学を学んだ後、音楽家への夢断ちがたく、カーチス音楽院で学んだ。1943年11月、巨匠ブルーノワルターの代役としてステージに立ち、歴史的デビューを果たした。

筆者はうれしい縁でこのバーンスタインの映像シリーズを翻訳DVD出版した。そのひとつOMNIBUS*7巻は「音楽の楽しみ」として出版されている(1966)。これはフォード財団が制作したTV番組で、創設者ヘンリーフォード一世は慈善事業で巨額の援助を行った。1968年末の資産は37億ドルに達し、全米の財団の6分の1を占めたという。

*オムニバスOMNIBUSとは「乗合バス」の語源のごとく、複数の作品をまとめて一作品とするもの。

翻訳出版のためには、Advance(前払金)、印税率などの交渉、なかなか大変だ。そこでもっとも重要なのが権利Rights取得。これはこのIP (Intellectual Property)の厳しい世の中にあっては重要なビジネス項目だ。何であれ著作物には著作権(Copy Rights)があり、翻訳権は二次的という意味でサブ・ライツSubsidiary Rightsと呼ばれる。

OMNIBUSの中で一番苦労したのが第4巻「アメリカのミュージカル」の著作権。劇中劇ゆえ、色々ミュージカルが出てくるので、その出演者の肖像権、著作権を全てクリアしないといけない。結局それに優に一年はかかった。

これら権利交渉当事者はRights Managerというが、それは英国では「対海外の契約」責任者を指す。

著作権国際条約のオリジン、ベルヌ条約1886年締結、明治19年というから古い。その後長年の間に複雑な経緯があって、著作権は「届けなくても」自然発生する。従い現在、普段見掛ける©マル・シー・マークやAll Rights Reserved表示は現在法律的にはあまり意味をなさないことは知っておいてよい。

Rightとはもちろん「右」で、たくさん英語表現がある。左利きの人(South Poe=元々は野球用語と言われてる)には申し訳ないが、どうやら語源的には「右こそ正義」となっている。Right angle(正しい角度!)は直角、Right angled triangleとは直角三角形。

副詞としては野球好きのアメリカ人のイディオム:Right off the bat=「ただちに」。つまりバットで打った瞬間にボールが飛んでいくという様子。Right as rainは(天気予報がどうだろうと)雨が降れば雨、=「それが正しい」の意。 Right onは会話で、「そうだ!」

ビジネス用語にも数限りなくある。頼りになる補佐役はRight Arm(右腕)、法的権利はRight of Action。Right sizingはRestructuringと同義だから人員削減? 昔、中東でのパイプラインの敷設工事はROW(Right Of Way=通過権)確保で苦労した。複数plでは権利(株主の引受権)となり、Rights Letterは新株引受権通知状。

伝統のNYフィルは来年10月、若干42歳の新監督アラン・タケシ・ギルバートのもと日本公演を行う。タケシの名のごとく、母君は日本人バイオリニスト。Right On! やった! The right man in the right place. 今から楽しみである。

(社)日本在外企業協会 「グローバル経営」より転載・加筆

■ 関連サイト
マンハッタンでの「バーンスタイン祭」