浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第118回】五輪のLEGACY

 

2019年9月1日

 

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TOKYO GLOBAL GATEWAY(掲載許可済み)

 ちょうど50年前、1969年の7月20日アポロ11号による人類初の月面着陸の日だ。

この時のニール・アームストロング船長の言葉は緊張感に満ちている。“Houston, Tranquility Base here. The Eagle has landed.” 「ヒューストン、こちら静かの基地。イーグル (=着陸船名) は着陸した」。そして、今も多くの人の記憶に残る言葉。“That's one small step for a man, one giant leap for mankind.”「これは1人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である」。

この時、日本にあって活躍したのが、同時通訳者、西山千さん、村松増美さん、そして鳥飼玖美子さん(立教大学名誉教授)。当時20歳を過ぎたばかりの鳥飼さんは、今もNHKの英語講座はじめ日本の英語教育政策への提言など活躍している。

さて、その鳥飼さんに圧倒されたというのが少し年下の少女、小池百合子さん。いよいよ来年7月24日から開催されるオリンピック、パラリンピックのホステス、現東京都知事だ。その小池さんの興味深いインタビュー記事がある (PRESIDENT誌2017年4月17日号)。いわく、「英語は世界で成功するためのパスポート」「IOC国際オリンピック委員会の関係者とは英語で直接メールのやりとりをしている」。元中東駐在の石油担当商社マンとして、現地カイロで小池さんの父上(貿易商)とも接触があった筆者が殊に目を引かれたのはそんな小池知事の学生時代。小さい時から英語で身を立てたいと考えていた小池さんは、高校ではESS(英語研究会)に入り、文化祭では毎年英語劇をプロデュースするなど活躍。ところが、月面着陸の TV中継を見て同時通訳のレベルの高さに圧倒される。プロになる道のりの遠さを実感して、英語で身を立てることをあきらめた由。そこで、アラビア語の通訳になろうと決め、大学を中退してエジプトのカイロ大学に留学した。

この話を鳥飼さんに伝えたところ、喜ばれた。そして「小池さんと英語(教育)談義をするのはいかがですか?」ともちかけ、賛意を得た。そこでまた、某日、某イベントで小池さんと少しお話する機会があり「鳥飼さんとの英語対談」についてお尋ねしたところ、「いいですねー」という即答あり。さあ、どこかこの興味深い企画を取り上げてくれるメディアはないものか。

確かに 2020 東京の LEGACY (後世に残す遺産)として、競技場や交通・輸送システム等々、ハード・ソフト両面にわたり種々のことが計画されている。が、やはりこのグローバル化時代にあって、「英語力、コミュニケーション能力、異文化理解力のアップ」こそ欠かせない。

昨、18年9月に東京·青海に誕生したTGG (Tokyo Global Gateway 東京都英語村) もその1つだろう。そこで現場感 (買い物、食事、海外旅行など) を体感し、若者たちが刺激を受け、さらなる広がりにつなげることが期待される。

JOEA 「月刊グローバル経営:Global Business English File 78」より転載・加筆