浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第77回】 Globish® + ESP = 仕事で使える英語


2015年12月01日

 

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1500語で通じる非ネイティブ英語 グロービッシュ入門

某年某日、所用で都内のあるオフィスビルを訪ねた。その際、ロビーで「Globishセミナー」というポスターが気になった。何かと思って会場を訪ねると、「Global + English=Globish」で、即ち1,500語の英語単語をキチンと学ぼうという運動。商標登録®もしたとのこと。

主宰は(一財)グローバル人材開発。千代田化工の技術系役員を務めたという白崎善宏理事長は入社して間もなく、イラン南部の油田地帯に建設の石油製油所に派遣された。
それが「英語」を使う原点とのこと。筆者も、若くして石油担当商社マンとしてテヘラン(イラン)に「ほうり出され」、英語を使わざるを得なかった。
ということで、意気投合した。

そういえば、社内英語公用語化を推し進める楽天(株)の三木谷社長の「たかが英語! ENGLISHNIZATION」(講談社)を見ると、その目指すところは「英語」ではなく、グロービシュGlobishだとある(p32)。
参照:楽天のENGLISHNIZATION

思えば、それぞれ小中高生だった男女4人のわが子のNYCに移住後の「英語力向上」の過程と成果を筆者はうらやむばかりであった。
早い話、TVの喜劇番組を見ながら子供たちがゲラゲラ笑うなか、ひとり笑えない自分だし、ハリーポッターの映画も(字幕なしには)理解できない。
が、ビジネス上の交渉、契約はまず間違いの無い英語でこなせるし、「Globish®1,500語と専門用語をこなせれば何とかなる」という思いに至る。

ということで、かねてより「アジア英語」を啓蒙している本名信行教授にアドバイスを求めた。この日本アジア英語学会The Japanese Association for Asian Englishes*の創立者のあいさつ文は明快だ。(*複数形になっていることに注目)
「英語はアジアの言語だ。アジアにおける英語の国際的普及は、ノンネイティブ・スピーカーがそれぞれの歴史的、社会的、文化的必然性に合わせて、いろいろな方法で英語を使う。これらの変種には差異よりも共通項のほうがずっと多い。英語の多様性を肯定的に評価すれば、相互理解を可能にする媒体を発達させることができるはず」 

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世界のグロービッシュ ─1500語で通じる驚異の英語術

その言は示唆的だ。だいたい、ご飯を下さいとGive me liceと頼んでrice(ご飯)でなくlice(シラミ)が出てきますか? 我々が普通に言う「あの店はおいしい」をThis restaurant is deliciousと言えば英語としては奇異に感じます。が、He is sharp(彼は切れる)は普通化してます。

要は、「臆することはない」し、Complex(優越感・劣等感)も不要だ。
ことば(英語に限らず)の美しさを意識する必要はある。が、Non-native(=後天的に得たAcquired)英語話者である以上、開き直らざるを得ない。

さて、総括として1,500語(+派生語)で十分なのか?
何をもって十分かにもよるが、例えば最初の「A」「B」「C」という何でもない言葉は本当に深遠な意味をもつ:Accountは計算、勘定とまさにビジネス用語だ。さらに見ると価値、考慮と深くなる。それがaccountability説明責任と高度に使われる。

Bookとは書籍だし帳簿だが、The Bookは「(キリスト教)聖書」だ。さらに、Callは「呼ぶ」「(電話を)かける」だが、「(神の)声」だ。野球でいうコールド・ゲーム(試合中止)はcold(凍結)ではなくcalled(審判の裁定)ゆえ、神聖にしておかすべからず。

こうして、基礎1,500語は、世界観にかかわる文化論にも発展する、いわば教養のかたまりでもある。このGlobish®に専門用語(ESP=English for Special Purpose)を加えてると、「仕事で使える英語」になること間違いない。

 

一般社団法人日本在外企業協会「月刊グロ―バル経営」(2015年11月号)より転載・加筆。

■ 関連参考サイト
日本「アジア英語」学会
(一財)グローバル人材開発