浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第76回】 大雑把なBall Park Figure


2015年11月16日

多々ある球技(Ball Game)でも、米国でBall Gameというと野球(Base Ball)を指す。

その野球場(Ball Park)での応援は、日本でのように太鼓にラッパで大音響をということはなく、大事な場面では、万の客がシーンとなり、返って緊張感が増す。
その緊張がほぐれるのは7回に全員で歌う「野球に連れてって」Take me out to the Ball Gameだ。
参照: 1949年作、ミュージカル映画で有名になった。

グローバル時代とあって、ありとあらゆる分野での日本人が世界で活躍しているが
野球(米国のML Major League)にあっても同様だ。

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写真:Los Angeles. Dodgers Stadium (同球団HPより)

日本のプロ野球が「企業の広報」という一面があるに対して、米国のそれはまさに「ビジネス」である。

現在福岡ソフトバンクホークス所属の松坂大輔投手の、レッド・ソックス(ボストン)時代のニック・ネームはDice-Kダイスケー。Diceとはサイコロ(Kはなぜか三振の意味)。

この陽気なダジャレはまた、それがビジネス投資=「賭け」という意味に通じる厳しさをも示唆している。

この厳しさはしばしばビジネス現場でChallenge挑戦と前向きに表現される。

What is your challenge?「どういう困難をどう乗り越えるか?」

ある資料によると現在も10人、過去を振り返ると60人近い日本人選手がMLで活躍した。彼らはみな例外なく「新天地で頑張ってみよう」という Challenge 精神に満ちている。

そのはしりは何と言っても独特のフォーム「トルネード(竜巻)」で相手をキリキリ舞いさせた、あの野茂英雄投手である。

今はもう昔になってしまったが、1995年カリフォルニア(LA)の晴れ渡った空の下、同胞がひとりChallengeする雄姿に感動したのは今でも忘れられない。

「日本選手が大リーグで通じるはずがない」という陰口のあるなか、このNomoの鮮烈デビューは、ストライキなどによるシーズン中断なので低迷してたその頃の人気を回復させた。

そのNomoがその後、球団を転々としていったのはまさにJob Hopping(転職)だ。

Nomoの最初の所属はDodgersだった。Dodgeとは小さい時からお馴染みの球技Dodge Ballの通り、「ヒラリと身をかわす」という意味だ。

発祥の地、NYのブリックリンの下町の道路上で、行きかう交通の合間を縫って子供らが身をかわしながら(Dodge)野球をしてたことに由来する。

そのDodgersは1958年に本拠をロサンジェルスに移した。

1996年、大統領選挙の時、ドール共和党副大統領候補が「私もブルックリン・ドジャースの Nomoのように頑張る」と語り、対するクリントン陣営から「やっぱり彼は古い時代の人」とNegativeキャンペーンをやられたこともあった。

政治に影響するほど(?)野球は米市民の生活に馴染んでいるが、その中でも、不思議なビジネス用語がBall Park Figureだ。

Ball Parkとは野球場のことゆえ「野球場の数字」? 

What is a ballpark figure? (だいたい、幾らぐらい?)

或いは、In the right ballpark (概算で)。

野球場は各地元の誇りであり、その大きさや形状は統一されていない。

それくらい大雑把、というのが語源である。

  

一般社団法人日本在外企業協会「月刊グロ―バル経営」(2007年6月号)より転載・加筆。

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