浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第31回】 Secondでは駄目なのですか?


2011年06月30日

 

 

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某紙に「Sue 2.0」という見出しがあった。何のことかと訝りつつ読むと、Sueという女性が事故で記憶喪失、しかし苦難を乗り越えて人生「再出発」ということだ。なるほどコンピュータ用語のVersion2.0になぞらえたうまい言葉だ。

さて、日本一高い山は富士山。3,776m。ではNo.2は?と聞かれて北岳3,193mと答えられる人はまずいない。因みに三番目は奥穂高岳 3,190m と僅差。富士山がダントツとわかる。世界一はエベレスト8,848m。でもsecond highest がK2(カラコルム)8,611mと答えられる人も多くない。ことほど左様にどうも二番手は影が薄い。

しかし、ボクシングの例のごとく、セコンドとは重要な女房役だ。
健康チェックでもセコンド・オピニオンを聞くのは大切なことである。
ビジネス上の企画・実行においてもsecond thoughtsをしてみることは大事だし、議決に当たってはseconder(動議の賛成者)は重要だ。
サラリーマンの定年退職後のsecond lifeにしても、先年鳴物入りで登場したメタバース(Meta+Universe)と呼ばれる電子上の仮想世界Second Lifeにしても「別天地」ほどの意味だろう。

ところが、secondにはどうしても「下位」(sub- deputy- vice-)というイメージが先行する。
オーケストラではsecond violin がなくては音楽が成り立たない。
ミュージカル「屋根の上のバイオリン弾き」はfiddler on the roofという。
ところが、fiddleにはどうしたことか「ペテン」といった意味合いが含まれ、会社など社会組織においてplay second fiddleというとどうしてもやや侮蔑的ニュアンスを含む。

それにしても「秒」をどうしてsecondというのだろう?
ラテン語でpars minuta primaとはpars(部分)minuta(小さな)prima(第一)。だからfirst small part。つまり、一時間(hour)をまず1/60に小さくするからminute。確かにマイニュートと発音すると「小さい」という意味だ。
そして、「次に小さく」するということで、pars minuta secunda(第二に)とはsecond small part。「秒」とはやっぱり「二番」なのだ。

他方、何でも一番が賞賛され、生き馬の目を抜くごとく競争の激しい米国ビジネス界にあって、この「第二位」を売り物にした広告がある。”Avis is only No.2 in rent a cars”「Avisは(Hertzに次ぐ)No.2に過ぎません」 。でも“We try harder”、私たちは一生懸命です。Niceでありたいんです。高トルクのFord新車を用意し、smileで皆様を送り出したいのです。灰皿が汚れてたり、タイヤの空気圧が減ってたり、そんなことは許されません。So why go with us? 是非私たちを使ってみてください。---と続く。

1946年、ウォーレン・エイビスはデトロイト空港にて世界最初のレンタカーを始めた。Avisはしかし、No.1の座をHertzに奪われた。そして、1963年に行われたのがこの広告キャンペーン。全米ベスト10スローガンに選出される。
これはマーケッティング戦略上のポジショニングの好例だが、
ファーストフードのバーガーキングマクドナルドの次)やコンピューターのハネウェル(IBMの次)もこの「2番目作戦」で成功している。

Avisの広告では人差し指と中指を出して「No.2」を表しているが、これはまさにVサインだ。「二位では駄目なのですか?」と言った蓮舫議員もこれらを知ってればよかったのに。

(社)日本在外企業協会 「グローバル経営」より転載・加筆