浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第35回】 Spamでなく Hamを!


2011年11月08日

 

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コネティカット州はNew Englandだという。
NY赴任にあたり、その一言に刺激され、しかも電車で一時間という通勤圏内ということで、緑あり海ありの美しいStamford市近郊に居を構えた。

日本語表記は(スタフォードではなく)スタフォード。そう、あのカリフォルニア州Palo Altoにある大学と同じだが、そちらはStanford。 1891年創立の同校は州知事でセントラル・パシフィック鉄道の創立者として財をなしたスタフォード氏が早逝した息子のリーランド・スタフォードの名を残すために設立された。すなわち人名だ。

さて、某年、シンガポールに出張時に驚いた。ラッフルズ・ホテルの横の通りがStamford Streetとある。訊いてすぐわかったことはシンガポールを植民地として開発したイギリス人トマス・スタフォード・ラッフルズ卿(Sir Thomas Stamford Raffles、1781 - 1826)の名前だ。

そこで「やっぱりそうか」と考えた。StamfordとStanfordはすなわち元は同じで、ネイティブ(=英米人)でもmとnの発音を混同するのではないか、と。我々日本人にとって最も難しいRLですら英国人が間違えたという例は本稿シリーズ第6回で取り上げた。

【第6回】海賊にみる「RとL」考 - 浜地道雄の「異目異耳」
実際、「発音を良くする」教材によく出てくるのがmnへの注意。その混同の元凶は日本語表記にあり、例えばsimple シンプル、sampleサンプル、 lampランプ、camp キャンプなど身近なことばにも多々ある。逆に日本人名の俊平=Shumpeiとか神崎(かみざき➡かんざき)と言う例もある。
よく使うcomとconは「共に」「全く」《強意》【ラテン語語源withの意】の接頭辞だが、con-は、m,b,pの前ではcom-となる(例: common、combination、company)。

ところが、GoogleやYahooで「スタフォード」と検索すると「スタフォード」と修正されて出てくる。機械的には明らかに違うはずなのにこれいかに。

逆の意味で不思議なことに、我々身近な用語である迷惑メール「スパ・メール」と入れると、機械が勝手に修正して「スパ・メール」が筆頭に列記される。ではこのSPAMとは何かを調べると、またまた不思議だ。

SPAM®とは米 Hormel Foods社(ミネソタ州オースチン)のランチョン・ミート、肉の缶詰で、Shoulder of Pork And haM”(豚の肩肉ともも肉)のacronym頭字語だ。1937年、元のHormel Spiced Hamから改称され、売り上げを伸ばし、戦時中から、現在に至るまでアメリカ(及びイギリス、韓国)のどこのスーパーにもある常用食だ。それが一体全体、なぜ、迷惑メールという意味になるのか?

イギリスのコメディー「Monty Python's Flying Circus」(モンティ・パイソンの空飛ぶサーカス)のコント。レストランで、客のバイキングの一団が「SPAMSPAMSPAM!」と大声で歌いだす。次第に店員も「SPAM」を連呼しだし、最初は嫌がっていた客夫婦も最後には屈してSPAMを注文することになるという他愛ない筋書き。このしつこいのが、広告メールの連想とのこと。なんだかスッキリしない説明だが、事実らしい。他方、これのこじつけで正常なメールはHam Mailと言われる。やはり、メールはHamであって欲しい。

PS:
近所のコンビニのレジにある吊るし広告を見て驚いた。「モンテイパイソン」とある!いったいどういうコメディーかぜひ見てみたい。

本稿はもちろん「スパンメールはやめてくれ」ということであって、SPAMを悪しざまにいうものではない。

(社)日本在外企業協会 「グローバル経営」より転載・加筆