浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第283回】 満月 ~ 兎にみる信心・布施



12月8日、今年最後の満月。その輝きに感嘆しながら、兎の信仰心を思いだしている。

(因みに、12月8日はお釈迦様が悟りを開いた正道会の日だ)

インドを中心とする古代仏教経典「ジャータカ」にある兎の話。兎は食事の前に布施をしなくてはならないと決めた。そして、食を乞われた時、草を食べてる自分には捧げるものが無い。ゆえに、この身を捧げようと、炎の中に身を投げた。これを帝釈天は「善」と褒め讃えて、月に送った。 

信心とはかくのごとく、富・財産どころか自分の命すら捧げるという「こころの状態」だ。 

ここで想起されるのは宗教家(ヒンズー教)、政治指導者として活躍したインド独立の父、マハトマ・ガンディーの残した「7つの大罪Seven Social Sins」だ(1925年10月25日Young India誌に掲載):

理念なき政治(Politics without Principle)/労働なき富(Wealth Without Work)/良心なき快楽(Pleasure Without Conscience)/人格なき学識(Knowledge without Character/道徳なき商業(Commerce without Morality)/人間性なき科学(Science without Humanity)、そして(自己)犠牲なき信仰(Worship without Sacrificeを挙げている。

 折しも、本12月8日、(統一教会問題を受けた)被害者救済新法案が衆院本会議可決された。審議者たちはこの兎の心を知っているのだろうか。はたまたキリスト教献金イスラム教の喜捨をー。

ここで、極めて重要点として「政教分離」を挙げねばならない。政教分離」“separation of church and state”では文字通り、「政府(組織、政体)」が「宗教」に干渉してはならないし、逆に宗教が政府に圧力をかけてはならない。が、他方、議員など政治家が宗教団体と交流し、影響しあうことを禁じるものではない。「政教分離」の米欧においてはしかりであるし、また、中東はじめイスラム圏では政教は一致している。

(上野元駐バチカン大使)誤解が多い「政教分離」 日本からの意見 一般社団法人 日本英語交流連盟

加えて、今回の国会論議においては、それ以前に、統一教会問題を追及した米議会での「韓国の対米関係に関する調査:フレイザー報告」(1978)を検証したのだろうか。日本での政治工作をも報告している。それから45年、日本ではきちんとした検証がされてこなかった。

重要なのは、ことがひとり「統一教会」だけの問題ではなく、すべての宗教(信心、信仰、活動、思想)にかかわることである。すなわち、文化。古今東西を問わず、人間の社会生活の営みという根幹問題である。洗脳、マインドコントロール原理主義ーー等々きわめて難しく微妙な問題を検証することなく、「公権による規制」の実施は不可能である。今まずすべきは、英知を傾け、論議を尽くし「日本版フレイザー調査」の実施である。

 

関連参考リンク:フレイザー報告書が見抜いていた宗教カルトの本質

税逃れ、メディア戦略、ビジネス展開…旧統一教会がアメリカで行ってきた巧妙な政治工作(集英社オンライン) - Yahoo!ニュース

 

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