浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第115回】ボランティアの州 〜 Tennessee

f:id:TBE03660:20210208200528j:plain

東京・戸越のバーで

 

2019年1月1日

 

f:id:TBE03660:20201216213139j:plain

Jack Daniel's Bar (東京・蔵前)

JackDaniel'sは米国のバーボン·ウイスキーだ。

そのラベルにはTennessee WHISKEY (スコッチwhisky とはスペルが違う)、LYNCHBURG TENNとある。Tenn とは Tennessee州でその Moore郡 Lynchburg町が創業本社所在地。ところが、そこはdry county (禁酒郡)。1920年禁酒法が33年に廃止されて以後も実施されている。

もう1つ「え!」と思った話題が「テネシー州Volunteer State」。Volunteerとは元々「義勇(兵)」。1812年の対英国戦争ではテネシーからの数千人の志願兵が活躍。特にニューオリンズでの戦いで勝利をもたらしたことが起源。また、対メキシコの戦いでも2,800人の州政府の要請に対して3万人の応募があった由。

Volunteer は聖書のラテン語が語源。voloは動詞で自ら「欲する」「求める」「願う」の意。十字軍では「神の意思に従う人々」を意味し、徴兵 drafts とは対照的な関係にある。

さて、2020年の東京オリンピックパラリンピックは、10万人ものボランティアを募集する由。フルタイム勤務に加え、交通費や宿の手配·費用など個人負担という条件に対してブラックとの批判も出てるようだ。

1948年のロンドン五輪がオリンピックボランティアの始まりであり、2012年の夏季ロンドン大会では応募者24万人の中から約7万人が参加した。18年の冬季平昌大会には1万8千人のボランティアが参加。日本からも外国語大学の学生など研修に参加した約280人から語学力審査に合格した約100人が参加した。筆者が彼らに直接聞いたところ、世界の一流人との直接コミュニケートをはじめ、現地の老若男女との交流など良い経験ができたと喜んでいる。大会を問題続きと報道したマスコミも、ボランティアスタッフに対しては好意的に評価している。

米国の州によっては高校生、大学生がボランティアに従事すると就職のためのキャリア形成につながるというシステムがあり、そこでは、一定の活動条件を満たした場合に認定証が発行される、とも聞く。

筆者の楽しい思い出は、NYC郊外の自宅近くにあった私立大学の学生オーケストラ。「オーボエ奏者募集」との掲示板にひかれて Volunteer 参加。練習前の準備を手伝おうとしたら、学生に「これは授業の一環であり、準備・片づけも単位につながるボランティアなのでゲストには不用」と言われ大いに納得したものだ。

そう。ボランティアとは聖書の言葉通り「主体的喜び」であり、すぐれて「自分発」ゆえ、ブラックかどうかは本人が判断することなのだ。学んだ言葉(英語)を貴重な機会に活かして、現場で inspire され自分の未来形成に役立てる。ワクワク感が伝わってくる。 

JOEA 「月刊グローバル経営:Global Business English File 75」より転載・加筆