浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第96回】 EF 〜 世界最大級のグローバル教育校

 

2017年9月1日

 

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EF New York 

NY。喧騒のマンハッタンのグランドセントラル駅から北に向けての電車 Metro - North Hudson 線はハドソン川をスレスレに沿いながら北上、まるで観光・遊覧旅行のようだ。といっても40 分、すなわち通勤圏内であるが、由緒あるTarrytown 駅に着く。ロックフェラーのカイカット邸やシャガールのステンドグラスで有名なユニオン教会などがある魅力的な町。私ごとながら某年、在米の長女夫妻が結婚式を挙げた。その懐かしい地に本年5月、風と緑を満喫しながら夫婦で訪ねた。

目当てはそこにある EF という「語学(英語) 学校」の NY キャンパスだ。EF - NY 校はまるでお城を想起させる年代ものの建物、広大な敷地(25 エーカー = 東京ドーム2個)だ。聞いてみると、元は1907年創立の Mary Mount という全寮制カトリック女子短期大学。確かに、キャンパスの中心にあるホールのドーム型天井に描かれた大きなフラスコ宗教画に名残をとどめている。その経営運営母体 Fordham大学が 2008年、報じられたところによると30 億円(US$27million) で EF 社に売却したとのこと。学校経営もビジネスとは、いかにもアメリカらしい。

対応してくれた理事の英国人紳士はマンチェスター出身。学生数は 800 ~ 1000 人(季節差がある)で、ヨーロッパ 40%、アジア 30% (うち日本 10%)、南アメリカ 20%、アフリカ10%。同社の沿革を聞けば聞くほど、驚きは増す。1965 年、若きスウェーデン人 Bertil Hult が大学の地下室にあった寮で設立。その後、ロンドンで体験型学習の大切さを実感し、教育的価値を確認した由。現在スイスのルツェルンに本部を置く同社は世界 116カ国に拠点を展開、日本(東京)には早くも73 年に進出している。今や50カ国で語学(英語)学校を運営しており、その従業員数は4万6500 人という大株式会社!! 加えて、同社では「英語テスト」を実施。毎年全世界 100 万人の受験結果を集積・分析し、国別 Proficiency (熟練度)を発表してるという。

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ノーベル博物館ストックホルム(EFがスポンサー)

それにしても、と思う。なぜこの世界最大級 の英語学校が日本(人)には知られてないのだろうかと。事実、筆者夫妻自身も、同行した長女(NYで中学・高校・大学教育を受けた)も知らなかった。NY や東京の友人・知人も。

特記すべきは、EF社が東京 2020 オリンピック・パラリンピック の「official partner (語学トレーニング )」だということ。ソウル(1988)、ピョンチャン北京(2008)、ソチ(14)、リオ(16)、平昌(18) に続いてEF 社にとって6度目のサービス提供となる。一体いくらの「先行投資」なのか?

折しも東京 2020 を視野に、東京都では青海地区に「英語村」TOKYO GLOBAL GATEWAY 計画が進行中。すでにその事業会社も発足し、開設(18 年9月)に向けて鋭意準備が進行中と聞く。

わが日本では国を挙げての「グローバル化教育・英語教育」「トビタテ留学」が叫ばれる中、 この「巨大英語学校」EF が事実上全く知られてないとはどうしたことか。この「ギャップ」 の意味するところは何か......。

EF とは Education First。「教育が第一」ということで、英国のブレア首相就任の第一声「Education, Education, Education」を想起させる。

■参考:発祥はスエーデン。ということでノーベル博物館のスポンサー

Nobel Prize Museum | EF Education First

 

一般社団法人日本在外企業協会「月刊グローバル経営」2017年9月号より加筆・修正。