2014年09月17日
United Kingdom of Great Britain and Northern Ireland |
名は体を表すNames and natures do often agree。ビジネス上「相手を知る」のはだいじだが、ことに国名は治政・歴史に直結し、興味深い。
記憶に新しいFIFA(Federation International de Football Association)2014の初戦相手「コートジボアール」。舌を噛みそうなその名前はRepublic of Côte(海岸) d'Ivoire(象牙)。つまりフランス語で、日本名は象牙海岸。
同じく強豪のイランIranは広い意味でArienアーリア(人)。
その愛称、Team Melliのメッリとはペルシャ語で国民を意味する。
同じ中東産油国、回教国ということで混同しがちだが、イランとアラビアは人種が異なるということは留意が必要。
アラビアの強豪は、重大なエネルギー・パートナーであるサウディ・アラビアSaudi Arabia。Saud家(現王朝名)のArabia (砂漠の民の意)、つまり、ファミリー国家なのだ。アラビア語にはpの発音がなくbとなり、JAPANジャパン⇒JABANヤバンと発音される。
わが「日本」は(決して野蛮国ではないが)、本来Nihon ないしNippon(これを内名ないめい、endonym/autonymという)。それなのに、Japanと外名される。外名(がいめいexonym)とは、つまり、外部第三者による呼称のこと。
Japanとは、ものの本によれば、福建語でジペンクオJih-pen-kuoと呼ばれ、唐代にはクオ「国」を省略してジーペンとしことに由来のよし。
さて、そのサッカーの「発祥国」は「イギリス」。イギリスとは「アングル人Angloの国」の意味で、ポルトガル語のイングルス Inglesとして日本に伝搬し、イギリスとして定着。アングル人はもともとドイツ北部シュレスビッヒ地方アングル(土地の隅)に住んでいたらしい。ブリテンBritainという呼称は、先住民ブリトン人「騒々しい人々」が語源。その後、彼らは自分たちをAnglishと呼ぶようになり、そこからEnglish/ England が生れたようだ。
実はFIFAの「イギリス代表」は4チームだ。イングランド、ウェールズ、スコットランド、+北アイルランド。前3者はそれぞれ主権国家ではないが、便宜的に「カントリー(国)」とよばれるCountries of the United Kingdom。他方、北アイルランドは「Province(州)」と公式に表現されている。つまりUnited Kingdom of Great Britain and Northern Irelandだ。
「イギリス」のこれら4つの「国・州」からなる世界最古(1863)のサッカー協会は、FIFA(創立1904)への加盟にあたり、「個の主張」(=4つがそれぞれ独立して参加)をしたそうだ……。
なるほど、例えばビジネス相手がスコットランド出身と聞いたら「Oh, Caledonian(スコットランドの古語)!」と言うと、相手の頬はゆるむ。お試しあれ。
では「イングランド」はというと、ヨーロッパから移住してきたゲルマン系アングル人の住んでいた土地という意味の「アングリア」から派生した言葉。
要するに、「イギリス」という国は実は存在しないのだ。我々単一島国民族(一応)からすると何とも複雑で、その治世・外交の難しさは想像を絶する。
さて、9月18日、いよいよスコットランド独立の「国民投票」が実施される。
もし、可決(過半数)となれば、2016年3月に向けて、300年ぶりの「独立」への動きとなり、政治経済へのインパクトは小さくない。固唾を飲む思いである。
一般社団法人日本在外企業協会「月刊グロ―バル経営」(2014年9月号)より転載・加筆。
■ 関連拙稿サイト
・ロンドン、ラッセル広場
・色々なParty