浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第54回】 Charisma講師、「実用英語推進」へ


2013年09月13日

 

英語は音読で伸ばせ! 子どもを英語好きに変える、中学からの勉強法
英語は音読で伸ばせ! 子どもを英語好きに変える、中学からの勉強法(著:安河内 哲也)

「只管音読」!?と、言われても、わからない。
「ヒタスラ音読」、即ち、英語の上達の鍵だ、と英語教育の大御所(同時通訳)の国広正雄氏から伺ったのは忘れられない。
参照:英語教育と護憲

それは元商社マンとして「(仕事で)使える英語」教育に腐心する筆者にも実感として良く分かる。だから学生向けの授業(コミュニケーション英語)でもそう教えてきた。

それが、ある時、「英語力は音読で伸ばせ」という本を見かけて、すぐに買い求め、直ちに読んだ。
まさにその通り。その著者が安河内哲也という大学受験予備校(東進スクール)の英語教師だと知ったのはその時だ。

その安河内氏が(彼の)母校、上智大学での学園祭で、受験生(とその父兄)向けに「英語」について語るとのこと(5月27日)。上智と言えば吉田研作教授のTEAPという前知識があったので、日曜日、来日中の語学コンサルタントアメリカ人B嬢)と出かけて行って驚いた。

兎に角、300人ほどの会場は満席。ムンムンだ。同氏の語り口は、「先生・教師・講師」ということではなく、いわばタモリとかサンマのごとく、バラエティー番組のタレントのようだ。

壇上で、演台から説教や講義をするのとは違う。何より「英語は 机で勉強するな」と白抜きの真っ赤なトレーナ姿だ。高校生の目線に立って、右に左に動き回り、壇をかけおりて、客席に語りかけ、問いを投げかける。 挙手をし、答えた学生には持参のTシャツをプレゼントというサービスぶりだ。会場は笑いで渦まく。そして内容は勿論当を得ている。恐れるな、実践あるのみーー、と。

もともと筆者の主張してきたことと多くの点で一致する。事後、「初めまして。私も大賛成」と二人(B嬢と)で挨拶をした。少々話もしたかったが、何しろ長蛇の列、果たせなかった。

安河内哲也先生の特別公開授業
安河内哲也先生の特別公開授業。出典:東進ハイスクール: 英語は机で勉強するな!!

その安河内氏がTVで「ヤンキー(茶髪)」を相手に英語授業をやる、というので、さて、どんな風になるのかと興味を持って見てみた。
結果はそれなりに「やる気」になった子もいたが、どうも歯車がかみ合わない。見てるこちらもハラハラする。
番組の最後に、同氏は(うまく行かなかったことを)「イヤー、悔しい」ともらしている。どうも「それなりにきちんと準備したけど」「初めての経験」「2-3日は悔しさでいっぱい」と吐露している。見てるこちらはその正直さに感動したものだ。

その同氏が今度は「TOEIC SWを」というセミナーで講演というので、スピーキング・テストにはことに関心のある筆者は、再度、大いなる関心を持って聴講に出かけた。(L=Listeningと R=Readingに対するSpeakingとWriting)

暑い日曜日。ここでもまた驚く。大聴衆。前回の「(大学)受験生」よりやや年齢層が高く、「大学生ないし社会人」の男女400人。

ここでは少し内容は少し異なるが、安河内節は炸裂する感じ。
「英語上達の3つの秘訣は?」。答えはPractice Practice Practice,だというのだ。
筆者も大学授業では秘訣をSpeak Speak Speak、Repeat Repeat Repeat,と繰り返してきた。
「何で英語を学ぶの?」。答えは「自分のDimensionを広げることとのこと。
「なぜ英語を学ぶのか?」については、自分の世界を広げること、と言ってきた。
ことば(英語)が通じると、楽しいよ!!
スポーツ、音楽、ビジネス、学問――。何でも広がっていくから。


勿論、一致したキーワードはこれだけではない。
「ペラペラなんて目指すの止めよう」「ネイティブ並み? そんなことあり得ないでしょ」と続く。
同氏の英語教育ついての思いはここに熱く語られている。
参照:http://toyokeizai.net/category/eigo-koukaeyo

講演が終わって、挨拶をし、又、驚いた「あ、浜地さんお久しぶり。
お出で頂きありがとうございます。Bさんはお元気ですか? あの後、少しお話をしたかったのですが、沢山人がいたので残念した」という。こちらは仰天。数か月まえの初対面。それも一回きりの立ち話を覚えててくれたのである。

受験生むけ英語指導と、ビジネス英語を教える身にこんなにまで共通項があるとは驚きであり、嬉しいことだ。
勿論、生徒の年代が上がり、社会に出ていくには机上の勉強も不可欠だし、教養を高めることも「魅力」には欠かせない。

しかし、入口の段階で嫌いにならずに、やってみようというモティベーションを上げるのはものごとの始まりである。

彼のプロファイルを見てたら「実務英語推進機構」の理事長とある。 聞けば、自分自身のDimension拡大へのChallengeのこと。46才!!。
参照:www.asahi-net.or.jp/~rm9t-ysku/blog-2

実は筆者は自分の授業においては「白熱教室」のサンデル教授を意識してきた。
しかし、今後は安河内方式をもパクらせて頂き、「もっと砕けた魅力」をとも思っている。
何と、自分の後ろには彼との対話を求めて、若い人が長蛇の列。
これは失礼をしたと、しかし、心温まる思いで会場を後にした。

■ 関連拙稿サイト

【第142回】「仕事で使える英語」への提言(前) Globish (Global English) - 浜地道雄の「異目異耳」
【第126回】Vassarに訪ねる ~ 明治期の少女留学生 - 浜地道雄の「異目異耳」

【第133回】「サムライ精神」と英語 - 浜地道雄の「異目異耳」