浜地道雄の「異目異耳」

異文化理解とは、お互いに異なるということを理解しよう、ということです。

【第47回】 Explosion = Exposure = 被ばく!?


2012年11月05日

 

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「=」「≠」マークは筆者が付けたものです

昨2011年9月17日。NYマンハッタンの最南地区、WTCビル(跡)に隣接するズコッティ公園に「We are 99%」を掲げるOWS(Occupy Wall Streetウオール街を占拠せよ)運動が発生した。

あたかも街全体が占拠されたごとき報道がなされ、日本を含む全世界に飛び火したとのことだから尋常ではない。

その直後の10月9日、筆者は緊張しながら現場、同公園を訪ねた。東京新橋のSL広場をちょっと大きくした程度のところで、数百人の(昔の言葉でいえばヒッピー風の)若者たちが、寝袋を持って寝泊りをしていた。中に、ヨガのレッスンをやってるグループもある。 のんびりとまるで「ボヘミアン生活」をエンジョイしてるふうだった。

他方、当日は、楽しいコロンバス・デーで、街を挙げての熱狂的なパレードは、一万人が参加、百万人が見物とのことだから、それこそ「Occupy Manhattan」だった。

参照:【第137回】2011の終わりに ~「たくましい日本」へ - 浜地道雄の「異目異耳」

ことほど左様に、報道・解説と現場の様子(緊張感)には気抜けするような大きなギャップがあった。

あれから一年。いよいよ11月6日(火)の米大統領選を控えた今、あれだけ騒がれたOWS運動が陰を潜めている。 

方や、我が国では今、昨年3月の福島原子力発電所事故を受けて、「原発ゼロ」を主張して毎週金曜日には首相官邸はじめ、全国規模のデモが行われている。

そこでの主張は「安全」で「安心」な社会の実現だ。

辞書を見ると、前者はsafeやsecured。後者は peace of mind安らかで危険のないことでcomfortableに近い。つまり安心とはすぐれて「心の持ちよう」なのだ。

それを訴えるデモ。Demonstrationとは即ち、自分は意見が違うという示威運動だから、そこには主張がある。シバシバ言論戦 war of wordsだ。

ゆえに、ここでは言葉の定義・実態をきちんと整理せねばならない。 何と言ってもエネルギーと環境、つまり現代文明社会での生活に欠かない重要事項である。

Demonstrationとはラテン語でde (完全に)+ -monstr (示す)+ -ate(動詞化語尾)証明する、実証する、実演することだ。同根として、monster 怪物とあるのは恐ろしい。尖閣諸島問題に端を発した中国各地の「反日デモ」の映像を見てると、mob(語源mobile)つまり暴徒化した感がある。

さて、この原発反対デモの根幹は「放射能汚染」の恐怖であり、「被ばく」である。そこで「被ばく」とは何か?広辞苑によると「被爆」とは原水爆の被害、「被曝」は放射線などに曝(サラ)されること。

英語で言えば前者は Explosion 爆発であり、後者は Exposure 曝(サラ)すであり、明確に区別できる。ところが、活字でわざわざ「被ばく」とすると、読み手(市民)の印象では両者が一緒としか映らない。

8月の長崎・広島の原爆記念日は「原発問題」と絡めて報道された。

中には「福島原発事故」を「(長崎・広島に次ぐ)第三のヒバク」「福島でのヒバクシャ」、つまりカタカナにして両者を意図的に結び付ける報道が目に付いた。ヒバクシャとは be bombed であり、A-bomb victim 原子爆弾被爆者のことだ。

思えば、昨年3月の福島原発事故にあっては「水素爆発」(hydrogen explosion)という報道があり、「水素爆弾」(hydrogen bombの爆発)かと市民を震え上がらせた。

ここは単なる言葉あそびでなく、冷静に理解し判断が求められる。国の、そして世界の未来のためにーー。

(社)日本在外企業協会 「グローバル経営」より転載・加筆

 

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